「足が遅い」のに盗塁のサイン 英明・中浦主将、意表突き二盗決めた

堅島敢太郎
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 (19日、第95回記念選抜高校野球大会2回戦 英明3―2智弁和歌山)

 0―0の五回表無死一塁。一塁走者の英明・中浦浩志朗主将(3年)は目を疑った。177センチ82キロで、握力は70キロ。がっちりとした体格で「足が遅い」と自認する自分に、監督が盗塁のサインを出してきたからだ。

 「やってやろう。アウトになったら監督のせいだ」。腹をくくると、その初球、中浦主将は二塁へ思い切り駆けだした。すかさず相手捕手の素早い送球が届く。目の前で捕球後の相手内野手が立ちふさがった。

 「だいたいこうなるだろうなと」。瞬時に逃げるコースを頭に描くと、ベースの手前で右に大きく方向転換。慌てた相手内野手のタッチを避けると、外野側から転がり込むように手を伸ばした。塁審が水平方向に大きく手を広げる。意表を突くしぶとい走塁に、甲子園が大きくどよめいた。「おそらく公式戦初盗塁。でも盗塁した気がしないです」

 県内でも指折りの強肩強打の捕手で、中学時代は四国選抜にも選ばれた。

 高校入学直前まで進学先に迷っていたが、四国選抜でバッテリーを組んだ寿賀弘都選手(3年)から届いた「英明で一緒に甲子園に行こう」とのLINEに背中を押され、英明への進学を決めた。

 この日は、五回の守備でフェンス際のファウルボールを好捕すると、八回には適時打を放ち、走攻守にわたって躍動した。

 春夏通算69勝の強豪から奪った大金星にも、「元々負ける気はなかった。まだまだ勝ちたい」と、平然と答えた。(堅島敢太郎)

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