大阪府吹田市の交番襲撃、被告に逆転無罪判決 大阪高裁

森下裕介
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 大阪府吹田市の交番で2019年、警察官を刃物で刺して拳銃を奪ったとして、強盗殺人未遂などの罪に問われた男性被告(36)の控訴審判決が20日、大阪高裁であった。斎藤正人裁判長は「重い統合失調症で心神喪失状態にあった」と述べ、刑事責任能力を問えないと判断。懲役12年とした一審・大阪地裁判決を破棄し、無罪を言い渡した。

 被告は、19年6月に府警吹田署の千里山交番に虚偽の通報をし、現場に向かおうとした警察官の胸などを出刃包丁で複数回突き刺して殺害しようとしたほか、実弾5発入りの拳銃を奪ったとして起訴された。公判では、刑事責任能力の有無が争点となった。

 裁判員裁判だった一審の判決は、被告が犯行前にネットで交番の勤務態勢を調べ、警察官の人数を減らすために虚偽の通報をするなど「合理的な行動を取っていた」として、限定的な責任能力があると判断した。

 斎藤裁判長は「犯行前後の言動は一見、合理的だが、その局面だけを取り出して分断的に検討すると評価を見誤る危険がある」と指摘。山に潜伏する著名人らを殺害するために拳銃を奪ったという動機は「極めて唐突かつ奇異であり、被告本来の人格ともかけ離れている」と述べた。

 その上で、犯行時やその前後の行動について「症状の悪化に伴い、動機に支配されるか動機の実現が最優先にされ、あらがうことができなかった」と評価し、行動を制御する能力は失われていたと結論づけた。

 大阪高検の小弓場文彦次席検事は「判決内容を精査した上で適切に対応する」とのコメントを出した。(森下裕介)

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