丸腰の「国境なき医師団」、紛争地での安全対策の要は 論座から
「どういうわけかこの世界から戦争がなくならない」「目的はただひとつ。『一人でも多くの命を救うこと』」。国境なき医師団(MSF)の看護師白川優子さん=写真=の寄稿「丸腰で紛争地に臨む『国境なき医師団』の終わりなき安全保障術」(13日)には、真の国際支援を考えるうえで心に刺さる言葉がちりばめられています。
MSFの安全対策のひとつは、武装せず、病院内への武器の持ち込みを禁止すること。そして対策の要は、市民・当局・武装勢力など現地の「すべての人びと」と対話し、中立の立場を明確にして活動することだと言います。
たとえば、アフガニスタンから2021年に米軍が撤退しタリバンが権力を掌握したとき、多くの機関が国外に退避しました。援助や国際便が止まり、医療機関が一気にダメージを受けるなか、民間資金で活動し、タリバンとも交渉の実績を持っていたMSFのチャーター便は入国。白川さんも現地病院に着任しました。
タフな対話を重ね、中立・独立の立場から、紛争地の市民に本当に必要な支援をする――。日本が国際社会で本来とるべき道にも通じると感じます。
白川さんは昨年6月21日の別の寄稿で投げかけています。「戦争は一瞬で社会を破壊させる」「そこから這(は)い上がらなくてはならないのは、戦争を操る上層部ではなく市民だ」「戦争を経験した歴史を持つ私たち日本人は、このことを想像するのは難しくはないはずである」。政治に携わる人に、特に読んでほしい論考です。
さて、論座は4月下旬で論考の新規掲載を終え、7月でサイトを閉じることになりました。当欄も今回で最後ですが、朝日新聞デジタルでは新たなオピニオンサイトが近く始まります。詳細は論座でもお伝えしていきます。今後もご愛顧をお願い申し上げます。
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上記の論考はこちらから(https://webronza.asahi.com/politics/articles/2023022800005.html)。昨年6月21日の論考「白川優子が見てきた戦争~血と涙と叫び声にまみれながら、未来を奪われていく市民たち」はこちらから(https://webronza.asahi.com/national/articles/2022061700006.html
)となります。
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