第9回戦後の混乱を生きるイラクのZ世代 革命への失望、それでも開いた扉
「時々、冗談で言うんです。『僕は戦争と一緒に生まれてきたんだ』って」
アクラム・ザーリミ(20)は、米国がイラクに侵攻する2003年3月20日の1カ月ほど前に生まれた。
もちろん、当時の記憶はない。「それでも、ずっと人生に付きまとっている。悲しいことだけど」。アクラムはそう言った。
イラク戦争後、日本の自衛隊が派遣された南部ムサンナ県の出身。首都バグダッドなどの大都市に比べて発展は遅れ、貧しい。父と母、6人のきょうだいで暮らした。
母国の状況に疑問を感じるようになったのは、中学生のころだった。
18年、兄が交通事故で腕を骨折すると、無職の父に代わって一家を支えるために働き始めた。夏休みだけでなく、平日も放課後に建設作業員として現場に立った。1日の稼ぎは多くても日本円で1800円ほど。「食べることで精いっぱいだった」
おしゃれもしたい、多感な時期。洋服すら買えない自分がみじめに思え、涙を流した。
一方で、戦後にイスラム教の宗派をよりどころにした政党や武装勢力が乱立し、その取り巻きがなんの不自由もなく暮らしているように見えた。SNSを開けば、高級車に乗り、豪勢な食事風景を投稿する、自分とはまったく違う世界に生きる裕福なイラク人や他国の若者がいた。
2019年、若者たちがバグダッドで立ち上がり、SNSの呼びかけでデモが始まりました。後半ではもがきながらも前へ進もうとするZ世代の姿を動画とともに伝えます。
若年層の高い失業率 汚職と縁故主義、賄賂
さらに不安になったのが、将…