佳子さま、「左近の桜」を植樹 皇室ゆかりの桜がたどった紆余曲折
水戸市の偕楽園のヤマザクラ「左近の桜」。16日の園内の植樹式典で披露されたこの桜は、紆余(うよ)曲折を経て、この地に再び根を下ろした。
左近の桜は、元は、京都御所に平安時代から植え継がれてきた由緒ある桜。御所では今も春になると花を咲かせる。水戸とのつながりは今から約190年前にさかのぼる。
有栖川宮織仁親王の第12王女・登美宮(とみのみや)吉子が1831年、水戸藩9代藩主・徳川斉昭の正室として嫁ぐ際、仁孝天皇から左近の桜の苗木を贈られたのがきっかけだ。だが、藩校「弘道館」に植えられた後、枯れてしまった。その後、京都御所を所管する宮内庁から1963年に複数の苗木が贈られ、偕楽園内に1本植えられたが、2019年の台風15号によって倒れた。
再び同庁から苗木の提供を受けたのは21年3月。茨城県によると、この桜の復活を望む声が多く寄せられたという。県が植樹や育成のための寄付を募ったところ、県内外から約3千万円が集まった。
16日に開かれた式典には、秋篠宮家の次女佳子さまが出席した。佳子さまは、大井川和彦知事とともに、左近の桜の苗木にスコップで丁寧に土をかけた。県の担当者は「左近の桜は長い間、県民に親しまれていたシンボルだったので、歴史の継承という意味で、大変意義のある植樹だった」と話した。
皇室にゆかりのある左近の桜。式典後、偕楽園内にある斉昭の別邸「好文亭」を視察した佳子さまに、説明者は桜のふすま絵になぞらえて「左近の桜もこのように美しい花を咲かせてくださることと存じます」と伝えた。佳子さまは、「楽しみですね」と答えたという。(多田晃子)
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