「ちゃぶ台返し」をどう見るか 徴用工問題と日韓、木村幹さんに聞く
徴用工問題に関する「解決策」を韓国政府が示したことで、日韓関係の雪解けが語られ始めた。最終的な解決への見通しは得られたのだろうか。韓国政治に詳しい政治学者の木村幹・神戸大学教授は「4年後の韓国大統領選で政権交代が起これば、ひっくり返される公算が大」だと見る。日本国内にくすぶる「ちゃぶ台返し」への懸念をどう考えればいいのか。木村さんに話を聞いた。
「満額回答」ではあるけれど…
――韓国政府が示した徴用工問題の「解決策」は、裁判で敗訴した日本企業の賠償分を韓国側の財団が肩代わりするというものでした。
「日本政府は従来、徴用工問題は韓国の国内問題であり、韓国が解決すべきものである、との立場を採ってきました。その主張が維持されることを目標と考えるならば、尹錫悦(ユンソンニョル)政権による解決策は満額回答に近いものと言えます。しかし問題は、まだ何も終わっていないということです」
――どういうことでしょうか。
「尹政権による解決策の提示と今回の日韓首脳会談で、徴用工問題が最終的に解決する見通しが得られたかと言えば、答えはノーです」
「まず、そもそも日本政府と韓国政府は、解決の形についての明確な合意をしたわけではありません。つまり、公式に何かを約束しあった状態ではないのです。また、韓国では与野党対立が激化しており、野党は今回の解決策に反対しています。もし4年後の韓国大統領選で政権交代が起きれば、ひっくり返される公算が大なのです」
「韓国政府は2015年に日本と『慰安婦合意』を行いましたが、国内からの批判が強く、17年に政権交代が起きたあと、合意を形骸化させました。似たことがまた起きる可能性は十分にあります」
意外に多い? 「解決策」への賛成世論
――日本では「ちゃぶ台返し」とも呼ばれる問題ですね。今回の会談がプラスの成果へとつながっていく可能性はないのでしょうか。
「あると思います。尹大統領…
- 【視点】
木村先生が政権交代と韓国の対日政策の話がつながっているところに注目しているが、ここがとても重要。韓国が「ちゃぶ台返し」をするのは、日本が何かをするとか、日本の過去に対する評価が変わる、ということではなく、韓国政治の中で日本との関係が保守と進