在外邦人苦しめる国籍法
寄稿
司法Voice 弁護士・仲晃生さん
国際化が進み、外国で暮らす日本国民も増えてきました。外務省の海外在留邦人数の2022年統計では約130万人で、そのうち永住者は約55万人です。家族や友人知人が外国で暮らしているという読者も少なくないことと思います。
外国で暮らすとなると、就ける仕事が少なかったり、在留期間が限られ退去強制させられる可能性があったりと、日本では心配する必要のなかった問題に直面します。そうした問題を解決する最も効果的な方法が居住国の国籍を取得することです。世界では、外国にわたった自国民が居住国の国籍を取得しても元の国籍を失わないですむ制度がある国は今や75%を超えます。これらの国の出身者は、母国とのつながりが絶たれる心配がないので安心して外国の国籍を得て活躍の機会を広げています。
一方、日本の国籍法は「外国の国籍を志望して取得した者は日本国籍を失う」と定めています。1899(明治32)年に作られて今も残っている条文です。ノーベル賞を受賞した南部陽一郎さん、中村修二さん、真鍋淑郎さん、カズオ・イシグロさんもこの条文によって日本国籍を失いました。
多くの在外邦人は、異国でそ…