準決勝会場を包む異様な雰囲気 WBCキューバ代表がかなえた「夢」

マイアミ=遠田寛生
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 強豪国同士の力の勝負が見られる。準決勝のキューバ―米国戦は楽しみが広がった。同時に、会場内外を包んだ異様な緊張感に複雑な気分になった。

 試合前、キューバの選手紹介が始まると歓声とブーイングが入り交じった。予想された反応だ。会場となった大リーグ・マーリンズの本拠は、米フロリダ州マイアミの「リトルハバナ」にある。

 1959年のキューバ革命以降、カリブ海にある社会主義の島国から逃げたキューバ系移民が多く住むエリアだ。

 政権に抑圧されて祖国を追われ、野球代表が政権の「プロパガンダ(宣伝)」に使われていると考える人もいる。試合中には、左翼席に「独裁政権のないキューバ万歳」との横断幕が掲げられる一幕もあった。

 会見では会場内で抗議が起きる可能性への質問が飛んだ。米国のデローサ監督は「球場に来る途中、チームバスの中で関係者からどんなことが起きうるかを聞いた」と明かした。

 米国の4番・三塁で出場し、四回に適時三塁打を放ったアレナド(カージナルス)はキューバ系米国人。祖父が亡命者だ。色々な思いを抱える。野球代表がマイアミで試合をする意味を家族でじっくりと話し合ったという。

 そんな中にも、明るい材料もある。今大会から、大リーグに入るために米国に亡命した選手のキューバ代表入りが許された。実力者である2番・三塁のモンカダや3番・中堅のロバート(ともにホワイトソックス)らが参加し、06年大会以来の準決勝に進んだ。

 大リーグ選手と国内選手がそろったチーム。キューバのヨンソン監督は「それが我々の夢だ」と語る。WBCを機に、ほかの大会でも「統一チーム」結成を願っていた。(マイアミ=遠田寛生)

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