160キロ超を連発した佐々木朗希 熱狂の準決勝マウンドで得たもの

室田賢
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 ひりつく緊迫感。この熱狂の中に身を置いた若者は、何を感じただろうか。

 第5回ワールド・ベースボール・クラシックWBC)は20日(日本時間21日)、米マイアミで準決勝1試合があり、3大会ぶりの世界一を目指す日本代表「侍ジャパン」はメキシコ代表に逆転サヨナラ勝ちした。

 2013、17年と決勝進出への道を断たれた一発勝負。その先発マウンドを託されたのは、21歳の佐々木朗希千葉ロッテマリーンズ)だった。

 会場のローンデポ・パークは、大リーグ球団の本拠。ヒット1本、奪三振一つで客席が沸く。場内音楽に合わせて、観客が歌い、躍る。そんな日本とは異なる熱気であふれる空間を、佐々木朗は「素晴らしい雰囲気」と語っていた。

 佐々木朗がマウンドに上がるのは、3月11日の1次ラウンド・チェコ戦以来。その日に行われる国際試合に、岩手出身の佐々木朗がマウンドに立つ意義も考慮されての起用だった。

 そして、今大会2度目の登板は、過去2大会で日本が乗り越えられなかった準決勝の舞台。栗山監督は重要な試合を託すにあたって、「日本が誇る何人かの投手の一人。彼の持っているものをそのまま出してもらって、世界中の野球ファンに楽しんでもらいたい」と意図を話していた。

 佐々木朗は、しなやかな投球フォームから160キロ超の豪速球を連発した。メキシコを応援する観客たちもマウンドへ拍手を送った。

 高校時代に球速163キロを計測して「全国区」になり、プロ入り後は機会あるたびに震災の記憶をたずねられる。プロ野球史上最年少での「完全試合」を達成してからは、周囲の騒がしさがさらに大きくなった。

 だからこそ、これまで佐々木朗は世間の目を意識して投げているように見えた。それが、ベースボールの国での世界一決定戦に臨み、ただ、打者との真剣勝負に集中した。存分に腕を振った。

 四回に痛恨の先制3ランを浴び、思わずその場でしゃがみ込んだ。打球が左翼席に消えた後も、スタンドをじっと見つめていた。本場の熱。1球の重み。トップレベルの選手たちと対戦して気づいた自らの現在地――。日本球界を背負う右腕が、この日投じた64球から得たものは少なくない。室田賢

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