第1回メジャーデビュー→活動休止 北海道から届く孤独と挫折に寄り添う歌
1月下旬の夜、北海道西海岸に位置する小樽市。JR小樽駅から少し離れた建物の3階にあるイベントスペースに、アコースティックギターをかき鳴らす音と野太い歌声が響く。
《甲子園優勝目指して 誰よりもユニフォーム汚してたあいつ 今じゃ白いボールは握ってないけど 世界一泥だらけでジャガイモ作ってる 武道館でライブやるんだって 勢いつけて田舎飛び出したあいつ 今じゃマイクじゃなくてフライパン振り回し カウンターから毎日ワンマンライブしてる》
このまちを拠点に活動するミュージシャン、花男(はなお、43)が弾き語りで配信ライブをしていた。
歌うのは「雑草の花」。サビにさしかかると、声を絞り上げた。
《アスファルトつきやぶれ アスファルトつきやぶれ 花が咲くのは冬を越えた瞬間だ アスファルトつきやぶれ》
「色んなまちから見てくれてありがとうー。今日も、小樽から全国へ歌、飛ばすからなー!」
花男は、曲の合間にカメラに向かって語りかける。オンラインでつながる観客が、チャットで声援や拍手の絵文字を送り続けた。
本名・宮田雅斗。札幌市生まれ。
24歳のころ、2003年にバンド「太陽族」のボーカルとしてメジャーデビューを果たした。全盛期は3千人規模のライブ会場を観客で埋めた。楽曲がカップ麺のCMに採用されたこともある。
ただ、人気は長くは続かなかった。08年、契約を打ち切られた。
そのころ、メンバー4人のうち2人が脱退した。新メンバーを加えてライブを続けたが、16年に活動休止した。
花男は一人で活動することを選んだ。北海道へ戻り、妻の地元の小樽に拠点を構えた。
連載「花男 ドッコイ歌い続ける」はこちらから
記事後半では、元ザ・ブルーハーツのドラマー梶原徹也さんが花男さんを応援し続ける理由を語ります。
当時の決意が「雑草の花」に込められている。冒頭の配信ライブで花男が語った。
「昔はプロ野球選手を目指し…