動き出す日米韓「2.0」 インド太平洋・経済安保で新時代に
戦後最悪とも言われた日韓関係は、16日の首脳会談で正常な軌道に戻った。世界が激動し、安全保障環境が厳しくなるなか、隣国同士がいがみ合う関係を乗り越えられるのか。米韓同盟や日米韓協力に詳しい、神田外語大学教授の阪田恭代さんに聞いた。(聞き手・小村田義之)
――日韓首脳会談をどう評価しますか。
「徴用工問題の鍵が解ければ、北朝鮮問題はもとより中国をにらんだインド太平洋や経済安全保障などで、日韓・日米韓の戦略的な協力が進めやすくなります。北朝鮮問題のみならず、対中国や台湾、インド太平洋、経済安全保障、ウクライナもある。その意味で、韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領の訪日は非常に大事なステップです」
「尹政権はよく決断したと思います。非常に難しい決断だったはずですが、まず韓国側で責任をもって解決策を提示し、それを日本が強く後押ししていくことが大事です」
――日韓関係は、これまでも「ちゃぶ台返し」が繰り返されてきました。
「これまで日韓両国が不和を起こしてきたのは、歴史問題とともに、戦略の不一致という要素が大きい。韓国の文在寅(ムンジェイン)・前政権は、インド太平洋とは距離をおいてきた。尹政権になって、ようやく戦略協力が動き始めました」
「尹政権の外交の司令塔は、李明博(イミョンバク)大統領時代とほとんど変わらない布陣をとっています。米韓同盟を重視する人たちで、尹大統領は『韓国は自由を守る国だ』というアイデンティティーです。韓国はグローバル志向のミドルパワーで、半導体や防衛産業などでも実力をつけ、自由民主主義の世界を守るリーダーにならなければならないという自負がある。ただし、地政学的には半島国家でもあり、南北に分かれた分断国家でもあるので、制約はあります」
加害者・被害者の構図から脱却できるか
――歴史認識の問題はどうですか。
「尹政権としては、過去を忘…
- 【視点】
本日3月23日の朝刊紙面には、阪田先生に加え、木村幹先生、緒方義広先生によるインタビューも掲載されており、三者の視点が良い意味でばらけており、ご専門や韓国経験の違いなどもあり、とても読み応えのあるものになっています。 今回、徴用工問題
- 【提案】
徴用工問題を巡る尹錫悦政権の動きは、大変な政治的決断を下したものです。背後には様々な要因があります。韓国における保革のねじれが革新を内向きにしている一方、保守が国際派となり、国際協調を推進しようとしています。また、韓国社会における対中警戒感