第44回「こっからだぞ」信じた、つないだ 大谷翔平が吉田正尚に託した希望
(WBC準決勝、日本6-5メキシコ)
右手でヘルメットを脱ぎ飛ばし、日本の大谷翔平(エンゼルス)が一塁を蹴った。
「三塁打を狙えるかなと加速したけど、無理するところでもない」。右中間を破る打球で悠々と二塁に到達。大声をあげながら、味方ベンチに向かって両手であおるようなしぐさを繰り返した。
「こっからだぞ!」という思いを込めて。
仲間を信じた。豪快な一発ではない。先頭打者として後ろにつないで、九回の逆転サヨナラ劇を呼んだ。
負ければ終わりの背水の打席でも、冷静さと積極性を失わない。「どんな打席でも、何点差でもやることは変わらない。ストライクが来れば打つ」。初球をとらえた。
中盤以降、あと1本が出ない展開が続いた。相手にはワンチャンスをものにされて先制された。嫌な流れの中で28歳が希望を見いだしたのは、4番吉田正尚(レッドソックス)の打撃だった。
七回、自らの四球の後に飛び出した吉田の3ランは、低めの難しい変化球をすくい上げたもの。
「技術的にすごいし、あそこで打つメンタルもさすが。後ろにつなげば何とかしてくれるんじゃないかという安心感があった」
試合展開だけでなく、味方の状態も見ながら役割を考える。村上宗隆(ヤクルト)がサヨナラ打を打った場面も、「ファーストスイングから良い軌道で振れていた」。「(二塁走者として)まず同点にできるよう、リードからしっかり」とイメージしていた。
日本打線の課題だった「大谷のうしろ」も充実してきた。「これで明日に最高の形でつなげられる」とうなずいた。(マイアミ=山口史朗)
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