鮮やかな重盗で一時は勝ち越し 惜敗の長崎日大、夏に誓うリベンジ

三沢敦
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 (21日、第95回記念選抜高校野球大会2回戦 長崎日大3-4京都・龍谷大平安)

 1点を追う三回の長崎日大(長崎)の攻撃。2死二塁のチャンスで、平尾大和選手(3年)に打順が回った。

 前の打席はゴロに仕留められている。「絶対に追いついてやる」。つなぐ意識でバットを短くにぎった。5球目。コンパクトに振り抜いた当たりは中前への同点打に。流れを引き寄せる会心の一打。拳を高く突き上げた。

 「やるべき練習は十分やってきた。悔いがないよう、野球を楽しもうぜ」。そう話し合って臨んだこの日の一戦。その後は一歩も譲らぬ緊迫した投手戦が続き、スコアボードにゼロが並んだ。

 試合が動いたのは七回の攻撃だった。

 1死後、加藤太陽(あさひ)選手(2年)が左前打で突破口を開く。犠打で送った後、栗山由雅(ゆいが)選手(3年)の打球が相手の失策を誘った。

 2死一、三塁。平山清一郎監督が「走れ」のサインを送った。栗山選手が二塁へと駆け出す。送球の間に加藤選手が本塁を突く。鮮やかな重盗が決まり、勝ち越した。続く広田樹大(きだい)選手(3年)が右翼に適時打を放つと、栗山選手も生還。点差を広げた。

 だがその裏。マウンドに戻ったエースの広田選手を待ち受けていたのは猛打の嵐だった。

 打者2人を簡単に打ち取った後、連打を浴びてピンチを招いた。暴投も与え、3失点。あと一つのアウトが取れず、西尾海純(みいと)選手(2年)にマウンドを譲った。

 試合は3―4の惜敗。8強入りした1993年以来の「1勝」はもう少しのところで届かなかった。

 同じ目標を掲げて挑んだ昨年の選抜。九回2死まで追い込みながら追いつかれ、延長十三回タイブレークの末に涙をのんだ。

 その戦いでスタメン入りした平尾主将は「一球の怖さを知り、一球を大事に励んできたのに。同じ失敗を繰り返してしまった」と悔やむ。広田選手も「流れを引き寄せ、油断があったのかもしれない」と振り返る。「甲子園という舞台は簡単には勝たせてくれない」と加藤選手。

 だが、まだ夏がある。リベンジの機会はめぐってくる。「絶対戻ってくる」と選手たち。今より強いチームに鍛えあげ、夏こそ必ず「1勝」をつかむ。(三沢敦)

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