祖母奪った津波、震災の教訓届け 3月11日生まれの9歳、伝承者に
岩手県釜石市立鵜住居小学校3年生の佐々木智桜さん(9)が19日、東日本大震災の語り部としてデビューした。偶然にも、震災3年後の3月11日に生まれた、市内で最年少の「伝承者」だ。
この日は、三陸鉄道鵜住居駅前にある、震災の記憶や教訓を伝える施設「いのちをつなぐ未来館」で来場者の前に立った。未来館の先輩語り部・川崎杏樹(あき)さん(26)の質問に答える形で、用意してきた紙を読み上げながら、震災時に気をつけることを訴えた。
智桜さんが生まれる前、祖母と伯母が津波の犠牲になった。父の智之さん(40)から当時の話を聞き「地震が起きた時は、何も持たなくていいからとにかく逃げて。命さえあればいいんだよとお父さんに教えてもらっています。みんなに伝えたい」と、大きな声で話した。
終了後、智桜さんは「これからも語り部をして、防災意識をもっと高めてもらいたいなあ」と感想を話し、「おなかすいたあ」と周囲をなごませていた。
智桜さんの話を聞いた同校の千葉心菜(ここな)さん(12)は「自分も他の人の命を助ける取り組みに関わっていかなければならないなと思った」と刺激を受けていた。
釜石市では「大震災かまいしの伝承者」の制度を2019年から始め、研修を受けた人を認定している。
智桜さんは、未来館に勤める母の智恵さん(40)と昨年12月に受講した。地震から津波が起きるメカニズムを興味深く聞いていたという。今月5日にあった避難訓練にも率先して参加し、弟の手を引いていた。
震災からちょうど3年後の3月11日生まれ。智恵さんは「予定日より早まったが、まさか11日に生まれるとは思わなかった。伝承のために生まれてきたみたい」と話していた。(東野真和)
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