元大関正代に復調の兆し 3年ぶりの平幕で見えた「苦しみ」の正体
大相撲春場所10日目 正代●すくい投げ○遠藤
大関の地位を失い、関脇からの特例復帰も逃し、土俵人生は下降線をたどる。2020年初場所以来となる平幕で臨む正代はしかし、土俵でかつての輝きを取り戻しつつある。
この日の一番は、相撲巧者の遠藤にすくい投げを食らった。ただ、立ち合いから左を差し込み、土俵際まで攻め立てたのは元大関の方だった。
前へ出る相撲が目立つ。「出られるようになった」と言った方が正確かもしれない。ずるずると後退した以前の姿とは違って見える。
昨年12月に負った右足親指のけがが癒えたことも復調要因の一つではあるが、最も大きな理由は別にあるようだ。31歳の西前頭筆頭は、取組後の取材にこんな言葉を残している。
「気楽に自分の持ち味を出して」(初日)。「今、何かがかかっているわけじゃないので、自分らしさが出せている」(4日目)。6勝目を挙げた8日目には、横綱と大関の不在で存在感を発揮したいか、との質問を制すように言った。「気負うとどうしても硬くなるタイプなので、気楽に自分の持ち味を出し切ることに集中できれば」
元々繊細な心の持ち主だ。今場所のノビノビとした相撲を見ると、看板力士としてのプレッシャーがいかに重かったかが分かる。裏を返せば、重圧のない今の正代には本領発揮を期待できる。もう一度見せてほしい、大関に駆け上がった頃の圧倒的な馬力を――。(松本龍三郎)
翠富士が無傷の10連勝 「平幕で2差」は20年以上ぶり
今場所最初の三役戦でも平幕翠富士に気負いはない。小結翔猿を割り出しで下し、10連勝。「自分でもこんなに勝てると思っていなかった」と喜んだ。10日目終了時点で、平幕が後続に2差をつけて首位なのは2001年秋場所の琴光喜以来。「このままの流れでばーっと勝てたら」。余勢を駆って賜杯(しはい)をめざす。
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