東大寺の大仏に託した手紙、20年ぶり返還 亡き妻の愛、家族に届く

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小西孝司
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 未来への夢を託した手紙「大仏夢たより」が昨年、東大寺の本尊・盧舎那仏(るしゃなぶつ、大仏)の胎内から20年ぶりに取り出され、参加者らに返還された。「タイムカプセル」との対面はどんな様子だったのか。様々なエピソードが、参加者から大仏夢たより実行委員会に寄せられた。

 「すっかり忘れていたので、びっくりすると同時にうれしさで涙があふれました」

 奈良県生駒市の不動産会社経営、藤岡新昌(よしあき)さん(60)のもとに昨年11月、手紙が届いた。自分と妻典子さんが、当時13歳と5歳だった2人の子どもやそれぞれにあてて将来の理想を記した2通だ。典子さんは高校の同級生。明るく、友人の多い女性だった。典子さんの手紙には「いつまでも仲の良い夫婦でいたいな」とあった。長女のちえりさん(25)は「未来のことを考えてくれている。愛情を感じてうれしかった」。

 典子さんは手紙を出して3年後の2005年、病気のため43歳で亡くなった。今も生きていたら、子どもたちはどう育っただろうか。私に対しても、20年前の気持ちのままでいてくれるだろうか――。新昌さんは頭の中に様々な思いが浮かんでは消え、夜遅くまで手紙を繰り返し読んだ。

 この瞬間を共有できなかったむなしさや、子どもたちの成長を見られない妻への哀れみを感じた一方、幸せを独り占めにしている自分がいる。「今自分がいるのはあなたのお陰って思えて、感謝することができた。還暦だけど、まだ頑張れると元気がでました」

事故で亡くなった長女からの手紙

 「娘が生きていた証拠をもら…

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