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救命につながったアプリ 自宅から医師が助言「プライスレスの良さ」

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編集委員・辻外記子
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 脚立から落ちて頭を強く打った80歳の男性が、和歌山県紀の川市の公立那賀病院に救急車で搬送された。

 2020年秋のある夜のことだ。

 男性は慢性の腎臓病人工透析を受けていて、血がさらさらになる抗凝固薬をのんでいた。

 病院に着くと、間もなく昏睡(こんすい)状態に陥り、血液の検査をすると、血液の凝固機能が異常値を示し、出血が止まりにくい状態だとわかった。

 当直をしていた内科医は脳内での出血を疑い、頭部のCTを撮影。頭蓋(ずがい)内に多量の出血を認めたため、CT画像を医療用コミュニケーションアプリ「Join」のクラウドにあげ、脳神経外科の待機医に連絡した。

 自宅にいた脳神経外科の藤田浩二医師は、スマートフォンで画像をみて、緊急手術が必要と判断。血を止める薬を使うことを当直医に指示、麻酔科医らの手配を頼み、病院に駆けつけた。

 到着20分後に開頭手術を開始でき、男性は翌日には意識が戻り、軽いまひが残る程度ですんだ。

 「Joinがなければ速やかな手術はできず、救命できていなかっただろう」と藤田さんは語る。

 Joinは、ベンチャー企業アルム社(東京都渋谷区)が手がける。2015年に医療機器として認証され、翌年に保険適用された。遠隔にいる医師らがクラウドを介してセキュリティー上安全に画像や情報を共有でき、専門医の助言を受けてすばやく適切な治療につなげることを可能にする。

 このアプリは国内の約500施設、世界では32カ国の約1150施設が導入している。

記事後半では、医師の呼び出し割合を減らしたり地域の病院間の連携強化につながったりしている様子や、2024年度に始まる医師の残業規制に向けて高まる期待についても紹介します。

待機医「プライスレスの良さ」

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