エースの心も巧みにリード 専大松戸の捕手吉田、完封劇したたか演出
(22日、第95回記念選抜高校野球大会2回戦、専大松戸3-0常葉大菊川)
グラウンド整備後の相手の変化を、一瞬で察知した。
六回。専大松戸のエース平野大地が、先頭打者にカーブを左前に鋭くはじき返された場面だ。捕手の吉田慶剛(けいごう)は、すかさずマウンドに駆け寄り、伝える。「変化球にアジャストしている」
バッテリーは五回まで、140キロ台の直球を見せ球に、カーブやスライダーで勝負していた。その変化球にタイミングが合ってきたとみるや、直球で押す投球にがらりと変えた。
五回まで44%だった直球の割合が、六回以降は71%まで上がった。変化球に目が慣れた相手打者は、最後まで直球に合わない。最後の打者も直球で打ち取り、平野とハイタッチ。巧みなリードで、被安打7の完封劇をしたたかに演出した。
平野とは、中学時代からのチームメートだ。茨城・取手シニアで自分は正捕手、平野は控えの捕手だった。高校入学時は同じくらいだった身長は吉田が171センチ、平野は181センチに。いまや見上げるほどになった。投手に転向し、最速151キロの右腕に急成長した相棒に「うれしさ半分、驚き半分」という。
平野の気持ちをのせるのも、吉田の役割だ。相手打線を冷静に分析しつつ、ピンチには平野が投げたい球を優先させる。「その方が平野が一番輝ける」からだ。
だからこの日サインに首を振られても、「納得いくまで首を振ってくれと言っているので」と気にしない。完封勝利に「自分が呼んだところに平野が投げてくれたおかげ」とたたえるコメントが扇の要らしい。
チームは春初勝利。ただ、吉田にはもう1勝したい理由がある。父・祐司さんも持丸(もちまる)修一監督(74)の教え子。茨城・竜ケ崎一高の2、3年時に夏に甲子園に出場したが、いずれも1勝止まりだった。宿舎入りする前「俺を超えて、監督さんの歴史を塗り替えてくれ」と思いを託された。
「強豪が相手でも、名前に負けずに戦っていきたい」。一戦必勝で、父超えの甲子園2勝に挑む。(安藤仙一朗)
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○持丸修一監督(専) 相手より少ない4安打。「(相手投手の)スライダーがよかった。ヒット数は全然気にしてない。こういう野球もあるかなと」
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