元プロボクサー、地元の愛知・豊橋市の児童養護施設で教室始める

伊藤雅哉
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 愛知県豊橋市に住む元プロボクサーの福井英史さん(57)が、自宅近くの児童養護施設「若草育成園」でボクシング教室を開いている。今年1月から始めた。

 2月の2回目の教室には、幼児から高校生まで20人ほどが参加した。全員で縄跳びをした後、福井さんらがフォームの見本を見せたり、ミットを持って参加者のパンチを受けたり。施設内で約1時間、汗を流した。

 「ボクシングの練習は自分との戦い。頑張っていたら、それが周りの人にも伝わる素晴らしいスポーツだと思っています。少しでも親しんでもらえたらなと」

 豊橋出身の福井さんは18歳で上京し、金子ジムでプロボクサーになった。レストランで働きながらリングに上がり、戦績5勝5敗1分け。自分なりに精いっぱい、競技に向き合い、やりきったつもりだ。32歳で豊橋に戻り、現在は冷凍カレーの製造販売をしている。

 引退後に浜松堀内ジム(静岡県浜松市)のトレーナーをしていたこともあり、もともとボクシングを教えることが好きだった。5年ほど前、主に女性を対象とした教室を始めてもいた。

 昨年10月、福井さんは若草育成園の山田吉勝園長(57)と話す機会があった。ボクシングを教えたいという気持ちはあったが、施設には親の暴力を受けた経験のある子どももいる。そのあたりのことを考え、福井さんは慎重だった。

 背中を押したのは山田園長だった。「福井さんのような施設外の人から学ぶことはいいことですし、夢を持っていない子もいるので、何かのきっかけになれば」と考え、とんとん拍子で話が進んだ。

 2回目の教室のゲストには、浜松堀内ジム所属の現役プロボクサー、松岡陸選手(21)も参加した。戦績3戦全勝の若手のホープが、迫力のあるミット打ちを披露すると、子どもたちも大喜び。終了後、「未来のチャンピオン」にサインを求める列ができた。

 福井さんには、ささやかな夢がある。

 「プロになる、ならないは別にして、ここからプロのジムの門をたたく子が出てきてくれたらいいなと。一歩を踏み出すのは勇気がいるもの。いつか、チャレンジする子が出てきてほしいと思っているんですよ」

 4月に3回目の教室を予定している。伊藤雅哉

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