日本男子初の連覇を狙う宇野昌磨(25)=トヨタ自動車=は、誰しもが認める練習の「鬼」である。
かつては高校生になってもトリプルアクセル(3回転半)が跳べなかった。
それが今では4種5本の4回転ジャンプをプログラムに組み込むまでに成長した。
それを実現させたのは、ひとえに宇野の努力のたまものと言える。
「練習の9割以上がジャンプ」
宇野はそう言う。
現行のルールである限り、最大の得点源であるジャンプの出来不出来が勝敗を左右する。
だが、練習すればするほど足には負担がくる。
ここ数年の宇野が悩んできたのは、大会前にジャンプの練習で足をねんざしやすいことだった。
そのリスクは、追い込めば追い込むほどに高くなる。
そんな宇野がいま、信頼を置いているのは練習に付き添ってくれる父親の助言だ。
宇野は今季、こんなことを言っていた。
「僕はすごく楽観的になった気がします。今までは『スケートで成績を落としたらすべてを失ってしまう』という気持ちでやってきました。今、お父さんがスケートを見てくれているんですけど、それが僕には良くて。なんか冷静に考えてみたら、『何で思い詰めていたんだろう』と思うことがよくあるんです。お父さんのように今までスケートに関与してこなかった人が近くにいると、『確かになあ』と納得するものがありますね」
初優勝した12月のグランプリ(GP)ファイナルの時の言葉である。
「僕が客観的になれないところを客観的に見てくれる。たとえば筋肉痛でジャンプが跳べないという状況の中でも、やっぱり満足して終わりたいというのがある。でも、お父さんはケガのリスクを考えて、『それは意味ないんじゃない?』と。確かにな、と。失敗に対する考え方もお父さんと話していて改めて気づきました。たとえば、練習で一つの失敗があるとする。僕は悔しがるんですけど、『何がそんなによくないことなの?』と。確かにな、と。お父さんは僕が当たり前だと思っている部分や、それによって自分を苦しめている部分とかを客観的に見てくれる。すごく相乗効果があると僕は思っています」
宇野の父に聞いてみると、「…

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