ビル自体を制振装置化? タワマン横揺れ「長周期地震動」対策のいま

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佐々木凌
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 揺れの周期が長く、高層階ほど大きな横揺れに見舞われる「長周期地震動」。2011年3月の東日本大震災では、震源から離れた場所にも被害をもたらした。タワーマンションや高層ビルで対策が進んでいる。(佐々木凌)

長周期地震動とは?

 波にもまれる船に乗っているかのように、ゆらりゆらりとした横揺れが続き、手すりにつかまらないと倒れそうになった。スクリーンに映ったシミュレーション映像では、キャスター付きの机やイスが右へ左へと大きく動いていた。

 大手ゼネコン・清水建設の技術研究所(東京都)の長周期地震動を体験できる装置で、東日本大震災時に東京都港区の24階建てオフィスで観測された地震波を再現してもらった。体験したのは1分半ほどだが、実際は5分程度、大きな揺れが続いたという。

 地震が起こす波は、揺れが1往復する時間(周期)が長いほど遠くまで伝わりやすい。建物にも揺れやすい「固有周期」があり、高い建物ほど長周期に共振して揺れやすくなる。さらに高層ビルが多い東京、大阪、名古屋といった都市圏は、堆積(たいせき)層と呼ばれるやわらかい地盤が厚く、揺れが増幅して長く続く。

 工学院大の久田嘉章教授(地震工学)によると、長周期地震動が広く知られるようになったのは03年9月の十勝沖地震。震源から約250キロ離れた北海道苫小牧市の石油タンクの液面が長周期地震動で波打ち、火災が発生した。

 さらに東日本大震災では、震源から700キロ以上離れた大阪市大阪府咲洲(さきしま)庁舎(55階建て、高さ256メートル)が最大で横に2・7メートル揺れた。内装材や防火扉、エレベーターのロープが損傷する被害が出たため、対策が加速するきっかけになったという。

 その後、以前からあった建物と地盤との間に免震装置を取り付けて揺れを伝わりにくくする対策に加え、各階の柱に揺れを吸収する制振装置を付けたりという対策が進んだ。

後半では、エレベーターの対策の現在地や、気象庁が2月から緊急地震速報に長周期地震動を加えたことなどを説明します

ビル自体を「制振装置」に

 さらに近年では、建物と同じ…

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