中学時代は「ノーコン」 常葉大菊川の久保、大舞台で立ち直った

魚住あかり
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 (22日、第95回選抜高校野球大会2回戦 常葉大菊川0―3専大松戸)

 「球が浮かないように、ホームベースに向かって投げよう」。二回裏2死一、二塁、久保綾哉投手(2年)は初回の嫌な雰囲気を振り切るように、大きく腕を振った。相手4番の打球は、遊撃手のグラブへ。硬い表情がようやくゆるんだ。

 コーナーを鋭く突く投球が持ち味だ。だが中学時代は制球力に悩み、チームメートからは「ノーコンピッチャー」と評された。

 常葉大菊川野球部への入部が転機となった。投手コーチは、常葉橘(現常葉大橘)の監督時代に3度の甲子園経験がある黒沢学部長だ。ともにフォーム改善に取り組み、スクワット中心の筋トレで下半身も安定した。先発が増え、昨秋の東海大会では初戦から2試合連続で完投した。準決勝では加藤学園を完封し、自信をつけた。

 そして大舞台。一回裏、WBCでの日本優勝が伝わり、観客が一斉に拍手した。「何が起こったのかわからず、さらに緊張してしまった」。球が高めに浮き、3点を失った。何度もロージンバッグを触った。

 立ち直ることができたのは、監督や仲間の信頼があったからだ。「このピッチングでいい。このままで行け」。石岡諒哉監督は静かに見守った。捕手の鈴木叶選手(3年)から「攻めていけ」と声をかけられた。

 二回以降は直球でカウントを取り、スライダーやカーブも織り交ぜて無失点に抑えた。「死んでいた顔にだんだん笑顔が戻った」と平出奏翔主将(3年)。

 全国の舞台で投球が通用することがわかったのは大きな収穫だ。「打たせて取る投球で、夏の静岡大会も勝ち上がりたい」。甲子園に再び立つことを誓った。(魚住あかり)

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