第1回安倍氏「おかしいじゃないか」 番組への不快感あらわ、広がった波紋
総務省が行政文書だと認めた計78枚にのぼる資料には、放送法が定める「政治的公平」の解釈をめぐって、安倍政権下での首相官邸側とのやりとりが克明に記録されている。
その結果、2015年、放送事業者の番組全体をみて判断していた政治的公平が、場合によっては「一つの番組のみ」で判断できるとされた。政府はこの見解について「解釈変更」ではなく、あくまで「補充的な説明」だと現在も主張する。
なお、総務省は大筋の流れを認めつつ、文書を精査したところ、詳しい内容については正確性が確認できなかったとしている。首相補佐官だった礒崎陽輔氏は、朝日新聞の取材に自らが総務省に働きかけるなかで解釈が追加されたと証言した。
当時の緊迫した政治状況とともに、一部の政治家によって解釈が決められていった様子を文書からたどった。
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第2次安倍政権が発足して、初めて衆議院の解散が宣言された2014年11月18日の夜、首相の安倍晋三はTBSの報道番組「NEWS23」に生出演していた。
番組では景気回復についての街頭インタビューが流れ、「アベノミクスは感じていない。大企業しかわからへんのちゃう」といった批判的な声が紹介された。
賛成の意見も取り上げられたが、そのバランスが気に入らなかったのか、安倍はキャスターに向かって不快感を示した。
「街の声ですから選んでおられると思いますよ」
「事実6割の企業が賃上げしているんですから。これ全然、声反映されていませんが。おかしいじゃないですか」
わずか数時間前、安倍は神妙な面持ちで首相官邸での記者会見に臨んでいた。
「税制こそ議会制民主主義と言っても良い。その税制において大きな変更を行う以上、国民に信を問うべきであると考えた」
「レクしてほしい」、はじまりは首相補佐官からの問い合わせ
翌年10月に予定されていた消費税率10%への引き上げを先送りし、週内に衆院解散に踏み切る意向を表明したのだ。
自民党からテレビ局への露骨な「横やり」が入ったのは、TBSに安倍が生出演した2日後の11月20日だった。
筆頭副幹事長の萩生田光一と…

放送法めぐる総務省文書問題
放送法の政治的公平性をめぐる首相官邸側と総務省側の安倍政権下のやりとりを記した内部資料。総務省が公開するまでの経緯や問題点をまとめた特集ページはこちら。[もっと見る]