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主役はこころの病の人々 雑誌「シナプスの笑い」はこうして生まれた

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宮田富士男
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 鹿児島市の出版社「ラグーナ出版」は、精神的な不調を抱える人たちが主役の雑誌づくりなどで知られています。社長の川畑善博さん(55)は、鹿児島の高校から東京の大学に進み、塾講師や出版社の営業職を経て帰郷。「他者と向き合うことに関心があった。それも自分の想像が及ばないような人と」という思いから、精神科病院で働くことにしました。そこから出版社を興した経緯をたどります。

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 精神科病院で精神保健福祉士として働いていた川畑善博さんは2008年、同じ病院の精神科医、森越まやさんとともに株式会社ラグーナ出版を設立した。病院を辞め、それまで自身が関わるNPO法人で06年から発行していた雑誌「シナプスの笑い」に専念することにした。

 「精神障がい体験者がつくる心の処方箋(せん)」と銘打つ雑誌を始めたのは、統合失調症で入院していた竜人(りゅうと)さん(仮名)から幻聴体験を記したメモ帳を見せてもらったことがきっかけだ。竜人さんは、他人の体験記を読んで自分の病気に気づいたことから、自分の体験を書くことで同じ病に苦しむ人の役に立ちたいと思っていた。

 メモをわかりやすく読めるように編集し、森越さんや患者、看護師らと話し合って誌面をつくった。ほかの患者からも投稿を募り、創刊号は1500部が売り切れ、増刷するほど反響があった。

 日本の精神医療は、明治期に…

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