与野党全面対決・20年ぶりの新顔対決 7道府県知事選の構図は

統一地方選挙2023

小田健司 大久保直樹 大村治郎 白石昌幸 倉富竜太
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 第20回統一地方選は20日、9道府県知事選が告示され、前半選がスタートした。知事選のうち、北海道、神奈川、福井、大阪、鳥取、島根、大分の7道府県の構図を紹介する。

北海道は唯一、与野党が全面対決

 北海道知事選は、前回に続いて国政の与野党が対決する構図となった。与党が推す現職の鈴木直道氏(42)と、野党共闘で挑む新顔で元立憲民主党衆院議員の池田真紀氏(50)ら無所属4人が立候補した。

 23日告示の9道府県知事選の中で、北海道が唯一、与野党が全面対決する形となった。

 鈴木氏は東京都職員、北海道夕張市長を経て4年前の前回知事選で初当選し、38歳の全国最年少知事(当時)に。夕張市長時代から菅義偉前首相との深い親交で知られる。前回同様、自民、公明両党と地域政党新党大地」の推薦を受けて戦う。

 企業誘致や再生可能エネルギー活用などの産業政策を中心に訴える。23日、札幌市の繁華街・ススキノで第一声を上げ、「新たな産業を北海道で興す、雇用を生み、地域を活性化させる経済政策を掲げているのは私だけだ」と支持を求めた。

 池田氏は、立憲の推薦のほか、共産党国民民主党社民党の道組織などから支持を受けた。ソーシャルワーカーとしての経験を生かし、医療・介護人材を派遣する支援組織の創設や人権条例の制定など、医療や福祉政策を主に訴える。

 第一声は観光名所・道庁赤れんが庁舎前で。「誰一人、置いてけぼりにしない道政をつくる」と訴えた。

 知事選にはほかに、建設設備業の門別芳夫氏(61)と元美容師の三原大輔氏(48)の無所属新顔2人が立候補を届け出た。

現職・黒岩氏に新顔3人が挑む神奈川

 神奈川県知事選は、4期目をめざす元キャスターで現職の黒岩祐治氏(68)=自民党県連、公明党県本部、国民民主党県連推薦=に、市民団体共同代表の岸牧子氏(66)=共産党推薦=と、政治家女子48党(旧NHK党)の党首、大津綾香氏(30)ら新顔3人が挑む構図だ。

 黒岩氏は23日、第一声で「4期目、改めて皆様に信を問う」と力を込めて訴えた。出陣式には、黒岩氏を推薦する各党の県組織幹部らが出席し、「危機を持ち前のバイタリティーで乗り越えてきた知事」と持ち上げた。

 一方、4年前の前回に続いて挑む岸氏は「国言いなりの知事から、一人ひとりの民意が生きる神奈川に大転換したい」と主張。共産の田村智子政策委員長も「市民運動から誕生した候補を知事へ押し上げていこう」と訴えた。

 大津氏は黒岩氏について「やっぱり多選じゃないか」と批判。旧NHK党の党首だった立花孝志氏もマイクを握った。

 同知事選をめぐっては、日本維新の会の県組織が「4選はあり得ない」と対立候補の擁立に向けて準備を進めたが、党本部が公認を見送ったため断念し、自主投票とした。立憲民主党は県連内で黒岩氏支援について賛否があり、自主投票となった。

福井は原発・北陸新幹線延伸が争点に

 福井県知事選には、自民、立憲、公明から推薦を受けて再選を目指す無所属現職の杉本達治氏(60)と、共産新顔で党県書記長の金元幸枝氏(65)が立候補した。

 廃炉中を含めて15基が県内に集中する原発をめぐり、活用を進める国の方針への姿勢が問われる。杉本氏が1期目に関西電力の老朽原発の再稼働に同意したのに対して、金元氏は原発の即時廃炉を主張する。

 来春に県内開業する北陸新幹線については、杉本氏が早期の大阪延伸を唱える一方、金元氏は延伸計画の凍結を訴えている。(小田健司)

維新に新顔5氏が挑む大阪

 大阪府知事選は大阪維新の会の現職に、「非維新」勢力の新顔ら5氏が挑む構図だ。26日告示の大阪市長選と併せた「大阪ダブル選」の号砲となる。選挙戦では、府と大阪市が誘致を進めるカジノを含む統合型リゾート(IR)への賛否などが争点となりそうだ。

 維新は過去3回のダブル選をいずれも制してきた。維新代表で再選を目指す吉村洋文氏(47)は、応援に駆けつけた前代表の松井一郎大阪市長と並んで第一声。「府と大阪市がバラバラでは成長できない。過去の二重行政はもうまっぴらごめんだ」と訴え、「IRは大阪に必要だと正面から訴えていく」と強調した。

 これに対し、非維新側は今回、巻き返しを図りたい考えだ。ただ、知事選では非維新勢力の結集ができないまま選挙戦に突入。前回は自民党が独自候補を擁立し、維新以外の他党も支援する「維新包囲網」を敷いたが、今回は自民や共産党などの対応が割れ、公明党も自主投票を決めた。

 自民や立憲民主党が自主支援する無所属新顔で法学者の谷口真由美氏(48)は、JR大阪駅前での出発式でIR計画の問題点を指摘。公費負担がさらに増えかねないとして、「検証し、問い直す」と訴えた。

 一方、共産が推薦する無所属新顔で元参院議員の辰巳孝太郎氏(46)も第一声で維新のIR政策を批判。「福祉や教育の大事な財源を食いつぶしてしまうのがカジノ計画。カジノをつくらせない意思を表明しよう」と呼びかけた。

 また、同知事選で初めて候補を立てた参政党新顔で歯科医師の吉野敏明氏(55)は、「カジノの依存症対策はカジノをつくらないことだ」と主張。政治家女子48党の新顔で薬剤師の佐藤さやか氏(34)は、「女性や若者の政治参加を訴えていきたい」と語った。

鳥取は今回も共産新顔と無所属現職の一騎打ち

 鳥取県知事選には、共産新顔で党県常任委員の福住英行氏(47)と、5期目を目指す無所属現職の平井伸治氏(61)=立憲推薦=が立候補を届け出た。前回選挙でも争った両氏による一騎打ちとなった。

 福住氏は岸田政権の防衛費増額方針や原発政策の見直しなどを批判。立候補表明が今月10日と出遅れたが、党派を超えた支持拡大を狙う。

 平井氏は新型コロナ対策が評価され、各業界団体や自民県連、公明県本部の推薦も得た。観光振興などコロナ禍からの「再興」を掲げ、組織戦を展開する。(大久保直樹)

島根は現職と新顔2人の争いに

 島根県知事選は、共産新顔で党県西部地区委員長の向瀬慎一氏(52)、無所属現職の丸山達也氏(53)=自民、立憲、公明、国民推薦=、諸派新顔で元島根県浜田市議の森谷公昭氏(67)が立候補を届け出た。

 向瀬氏は12年ぶりの知事選挑戦。防災・減災対策を掲げ、島根原発2号機の再稼働反対を主張する。

 丸山氏は保守分裂となった前回選で初当選。人口減少や新型コロナ、物価高騰対策などを掲げる。

 森谷氏は教育現場のIT化や不登校児への支援策の充実とともに、原発再稼働反対を訴える。(大村治郎)

20年ぶりに新たな知事選ぶ大分

 大分県知事選は5期務めた広瀬勝貞知事(80)が今期限りで引退し、20年ぶりに新たな知事を選ぶ戦いとなった。ともに無所属新顔で、前参院議員の安達澄(きよし)氏(53)と、前大分市長の佐藤樹一郎氏(65)=自民、公明県本部推薦=が激突する。

 安達氏は2019年参院選で野党統一候補として自民現職を破ったが、1期目で辞職して知事選に挑む。

 政党に推薦・支持を求めない「完全な県民党」を掲げ、草の根の選挙戦を展開する。別府市で開いた出発式では「現場の声や知恵、汗を集めてボトムアップで一緒に新しい大分県をつくりたい」と訴えた。

 ミニ集会を重ね、動画投稿アプリを活用して支持の拡大を図る。

 佐藤氏は、大分市長を2期8年務めた。出陣式には自民党の茂木敏充幹事長や県選出国会議員、公明党の県議らが駆けつけた。

 佐藤氏は第一声で「広瀬知事が取り組んできた県政を継続、大きく発展させていきたい」と述べ、20年におよぶ広瀬県政の継承と、自身の行政経験を強調した。選挙戦では、大分商工連盟を中心に、県内全域に後援会の支部を立ち上げ、組織戦を展開していく。

 大分では、知事選の投開票日3日前の4月6日、安達氏の辞職に伴う参院大分補選が告示される。与野党対決の構図になる見通しで、二つの選挙がどう影響し合うのか、両陣営とも神経をとがらせる。

 佐藤氏の出陣式で自民の茂木氏は「知事選の勝利を期す。その勢いを参院補選へとしっかりとつないでいきたい」と、相乗効果への期待を述べた。

 一方、立憲民主党の岡田克也幹事長は21日、大分市内で記者団に、安達氏から知事選への推薦依頼が無いことを念頭に「それぞれの支持者の判断で、しっかりと補欠選挙を戦っていきたい」と述べるにとどめた。(白石昌幸、倉富竜太)

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