芥川賞作家の親友がつくるクラフトビール 受賞の返礼品を限定販売
小説「荒地の家族」で芥川賞を受賞した仙台市の佐藤厚志さん(41)をたたえるビールができあがり、宮城県石巻市のクラフトビール醸造所イシノマキホップワークスが限定販売している。心を込めて仕込んだのは、佐藤さんの中学時代からの親友だ。
「友への讃歌(さんか)」と名付けられたビールは、濃い赤色で甘く、苦みも持つアイリッシュレッドエール。醸造長の岡恭平さん(41)が、佐藤さんとともにアイリッシュバーで飲んだビールをイメージして仕上げた。ラベルには、佐藤さんが執筆する姿や受賞作に登場する亘理の海などがイラストで描かれている。
岡さんは、仙台市立宮城野中学校で2年の時に同じクラスだった佐藤さんと仲良くなった。高校は別だったが、仲の良い10人ほどで花見やキャンプなどを楽しみ、今も交友を続ける。
芥川賞の選考委員会があった今年1月19日には仲間ら8人で東京に駆けつけ、佐藤さんがいたビルの近くで待機。受賞決定は、佐藤さんがビルの窓ぎわで、腕で丸印をつくって知らせてくれた。2月に都内であった授賞式にも招待された。
喜びをさらに分かち合いたいと、クラフトビールの創作を提案。2月下旬にできあがると佐藤さんも喜び、受賞祝いの返礼品として使ってくれた。
「本に熱中しすぎても大丈夫」なビール
このビールは、時間経過や温度の変化で異なった表情が味わえるのが特徴だ。「だから本に熱中しすぎても大丈夫。厚志の作品を読みながら、ゆっくり味わってほしい」と岡さん。
受賞作は、東日本大震災後の風景や暮らしを沿岸部に住む男性の視点で描いたものだが、醸造所のある石巻市中心部も津波被害は大きく、その影響で今も空き地が目立つ。
醸造所を運営する一般社団法人イシノマキ・ファームは、訪れた人たちがクラフトビールを飲みながら語りあえるビアスタンドを醸造所の隣地で計画。今月末まで、資金集めのクラウドファンディング(https://camp-fire.jp/projects/view/655793)を実施している。岡さんは「さらに様々なビールをつくり、皆が集まる場所にして街を盛り上げたい」と話す。
「友への讃歌」は瓶入り330ミリリットル、660円(税込み)。イシノマキホップワークスの醸造所や販売サイトで買うことができる。500リットルの限定醸造で、売り切れ次第終了という。(原篤司)
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