「傷だらけの天使」で水谷豊さんが教わった、俳優への最高の褒め言葉
増田愛子
10代から、ドラマや映画に出演してきた水谷豊さん。演じること自体は楽しかったが、いつしか「僕には別の世界があるはず」という思いが膨らんでいた。「撮影の仕組みに縛られるような感じが、嫌だったんだと思います」
芸能界を去るつもりが、大学受験に失敗。「アルバイト」のつもりで、俳優として活動していた20代前半、「これが終わったらやめる」つもりで参加した、ドラマ「傷だらけの天使」(1974~75年)で、注目を集めた。
萩原健一さん演じる探偵事務所調査員の、弟分役。この時、岸田今日子さん演じるボスの片腕役として出演していた縁で交遊が始まったのが、13歳年上の岸田森(しん)さんだった。
文学座出身で、実相寺昭雄監督の映画の主演や、ドラマの名脇役として活躍していた森さん。日常会話の中で、サラッと「宝物」のような一言を口にすることがあった。中でも心に残っているのが、この言葉だ。
「役者にとって、最高の褒め言葉は『地でやっているんですか?』と聞かれること」「豊はね、何をやっても豊のままでいてほしい」
別人の人生を演じるには、ど…