勢いで借りた空き店舗 映画監督が貼り紙と横長ガラス窓に託した願い

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白石和之
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 「事業計画を立てずに想(おも)いだけでハンコを押してしまった」。街中にあるビル1階の空き店舗に、新たな借り主が書いた一枚の貼り紙がされている。

 後にはこう続く。「『こんなものがあったらいいな』という声をお聞かせください」。無謀にも見える行動に踏み切った「想い」とは何なのか。

米国で活動中に襲ったコロナ禍

 もともとギョーザの無人販売所が入っていた。移転から3カ月後の3月初め、看板が外され、シャッターも閉まったままの店舗のガラス窓に、貼り紙は登場した。

 書いたのは、映画監督の高野宙(ひろし)さん(35)。

 大阪芸術大を卒業後、米国に渡り映画学校修士課程を修了。ロサンゼルスで映画作家やアートディレクターとして活動していたさなか、コロナ禍に見舞われて仕事が激減し、地元の新潟県長岡市に拠点を移した。

 疲弊しているのは長岡も同じだった。飲食店や物販店、事業所が次々と休業に追い込まれ、街中にはくしの歯が欠けるように空き店舗が増えていった。

 市によると、10年ほど前に200カ所弱だった中心街の空き店舗は、コロナ禍で加速度的に増え、2021年度は約300カ所になった。

「あったらいいな」と思うものを教えてほしい

 「もの悲しい街の姿からくる…

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