動かぬ赤ちゃんに添えた手紙…突然の逮捕、逆転無罪を導いた母の思い

有料記事

吉田啓
[PR]

 突然の逮捕におびえ、誰も信じられず、心が折れかけたこともある。

 「もうベトナムに帰りたい」とも思った。

 それでも、おわびの手紙とともに弔った2人の赤ちゃんへの思いは、揺るがなかった。

 自宅で死産した双子の遺体を遺棄したとして逮捕されてから、2年4カ月。

 一、二審で有罪となっても、レー・ティ・トゥイ・リンさん(24)は最後まで、裁判を闘い抜いた。

 ベトナム出身のリンさんが来日したのは、2018年8月。技能実習生として熊本県内の農園で働き始め、収入の多くを、故郷の家族に仕送りした。

 来日から2年後の夏、交際相手との子どもを妊娠していることに気づいた。

 だが、雇い主の農園にも、相談役の監理団体にも、そのことを告げられなかった。

 妊娠や出産を理由に、実習生の女性が雇用主や監理団体から強制的に解雇され、帰国させられた例を、SNSを通じてたくさん見聞きしていた。

 日本に来るため、ベトナムの実習生を送り出す機関に両親の5年分の年収に相当する約150万円を支払い、多額の借金もあった。

 「妊娠したことが周囲に伝われば、帰国させられる」。誰にも相談できなかった。

 妊娠を疑った監理団体が、妊娠検査薬を渡してきて結果の通知を迫ったり、「妊娠して産んだりしたら、とても大変だよ」と告げたりしてきたことに、不信感を抱いていた。

寒い夜に1人で出産、手紙に託した言葉

 11月14日の夜。

 一人で住んでいた農園の寮で、陣痛が始まった。

 「何回も死んで、そして生き…

この記事は有料記事です。残り1688文字有料会員になると続きをお読みいただけます。
今すぐ登録(1カ月間無料)ログインする

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません