「4年前と比べ、年間移住者数は約2倍に拡大した」。人口減少の克服を「最重要課題」とする山口県がそんな実績を掲げている。ただ、市町の担当者は「移住者」が増えたのか、分からないという。一体なぜ?
「人口減少の克服」 県政の最重要課題に
国勢調査によると、2020年までの5年間で山口県の人口は6万2670人減り、減少率は4・5%。減少率は全国の都道府県で9番目に高い。村岡嗣政知事は人口減少の克服を県政の最重要課題とし、移住促進は重要な施策の柱の一つだ。
移住者の実数を把握するのは困難なため、県は各市町の協力を得て住民異動窓口で任意のアンケートを実施。「移住者」は17年度の1745人から年々増え、21年度は3588人に。県は26年度まで5年間の新たな総合計画「やまぐち未来維新プラン」に、県内への「移住者」が「直近の4年間で約2倍に増加」したとの実績を盛り込んだ。総合計画で「きめ細かな相談対応や移住者ニーズ(需要)に対応した受け入れ支援に取り組んできた結果」と自己評価した。
従来の総合計画「やまぐち維新プラン」(18~22年度)では、「移住者」の目標を5年間で1万人と設定していた。県のまとめでは18~21年度の4年間で累計1万2015人に達し、昨秋の政策評価で「目標を達成」と振り返った。
ただ、総務省の住民基本台帳人口移動報告によると、21年の県内への転入者数は2万2187人で、17年の2万2693人から増えてはいない。転入者数を転出者数が上回る「転出超過」は21年に3067人で、17年より528人減少したが、転出者数が1034人減った影響も大きかった。
「移住者」の集計は、各市町の住民異動窓口での任意のアンケートで行う。転入のきっかけを「就職」「結婚」などの7項目から選び、このうち一時的な転入である「就学」「転勤」などを除いた人数を「移住者」として計上している。
「移住者」集計 アンケート様式を変更
当初は県がつくったアンケートを使って市町が報告していたが、18年10月の報告分からは市町独自の様式も認めることにした。
山口、宇部、萩各市は内容を変え、別紙だったアンケートを住民異動届の一部に入れ込み、転入者が回答しやすくした。
宇部市の担当者は「移住促進策を探るため、より正確なデータを把握したかった」。周南市は選択肢を14項目に増やした独自アンケートに変えたのを機に、より積極的に回答を求めるようにしたという。
その結果、アンケートの回収…