暴力・ハラスメント防止へ 日本サッカー協会が巡らす「毛細血管」
スポーツ界の暴力・ハラスメントが絶えない。根絶に向けてどのように啓発を進めていくのか。日本サッカー協会の今井純子リスペクト・フェアプレー委員長が、競技団体としての取り組みを語ってくれた。
スポーツでの暴力・ハラスメント・体罰、どうなくす?
【意見募集中】スポーツの場で暴力を受けたことはありますか。それをなくしていくためにどんな仕組みや行動が必要ですか。ご意見をお寄せください
◇
サッカーに限らず、スポーツ界の暴力・暴言・ハラスメントの現状は、誇れる状況ではありません。だからこそ、変化を起こさなければなりません。そこで、啓発・予防を進めるための「毛細血管」をつくる方向に進めようとしています。
最初にサッカーの安心・安全を守る担当者を、47都道府県協会と大学やクラブユースなど各カテゴリーの全国組織に1人ずつ置いたのが、15年です。イングランドなど海外の事例を参考にしたもので、「ウェルフェアオフィサー」と名付けています。
また、試合の場で暴力・暴言を注意していく担当者も、日本協会から各連盟やリーグの全国大会に配置しました。
そして、今後、こうしたウェルフェアオフィサーを小学生から大人のチームに至るまで、あらゆる地域クラブ、町クラブでも置いてもらう仕組みづくりを進めます。シーズンごとに、各チームが代表者や監督を届け出るのと同様に登録する形を考えています。
各クラブの担当者には、eラーニング(動画視聴)形式の学びを日本協会から提供していきます。
具体的な役割としては、まず、各クラブの方針や行動規範を明文化してもらうこと。そして、より安全に、安心して活動できるクラブ環境を整えるためのセルフチェックをして、足りない部分を改善してもらうことが基本です。
例えば、「指導者・スタッフが全員、またクラブとして、暴力根絶宣言をしている」「クラブ役員・スタッフ、指導者に対して、暴力根絶・リスペクトの研修を行っている」「遠征などの移動について、事故などを想定した緊急時のマニュアルを作成している」などです。
資金が豊富な大きな規模のクラブでないとできない、というものではなく、町クラブでも気持ちさえあればできる内容になっています。「ちょっと気になる」「行き過ぎないようにしよう」とお互いが言える文化をつくりたいと思います。
いくら協会がポリシーをうたっても、伝えたいことが伝わるようにしていかないと、状況は変わりません。この「毛細血管」を介して、保護者を含めたみんなに伝えることが必要です。
◇
朝日新聞フォーラム面では、「スポーツでの暴力・ハラスメント・体罰、どうなくす?」というテーマでアンケートを行っています。スポーツの場で暴力を受けたことはありますか。それをなくしていくためにどんな仕組みや行動が必要ですか。3月30日午後2時まで意見をお寄せください。(聞き手 編集委員・中小路徹)
有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。
【10/25まで】すべての有料記事が読み放題!秋トクキャンペーン実施中!詳しくはこちら