3連続ボールで気づいた不調のわけ 山梨学院の林がみせた修正能力

三宅範和
[PR]

(24日、第95回記念選抜高校野球大会2回戦 山梨学院4-1富山・氷見)

 先発投手が大崩れすると、その時点で勝利の可能性はかなり低くなる。勝利をつかみ取るには、先発投手は調子が悪いなりに自ら「試合を作る」しかない――。

 先発のエース林謙吾投手の完投勝利は、試合中の修正能力を見事に発揮し、試合を作った結果だった。

 立ち上がり、調子は良くなかった。一回、打者2人を凡打に打ち取った後、味方の失策で2死一塁に。ここで「ムキになってしまった」と甘く入った球を連打され、1点先取を許した。

 二回、三回にも1本ずつ安打を打たれ、失点はしなかったものの、リズムに乗り切れない。

 続く四回、先頭打者に初球から3球ボールが先行し、先頭打者を出塁させかねないピンチになった。

 この3球目に、修正への「気付き」があった。「リリースポイントで手首が寝ていることに気付き、立てるように修正した」。それからは、直球の球質が良くなり、投球内容にもはっきり表れた。

 この打者と次打者を連続三振に仕留め、四回はこの試合初の三者凡退に。修正後の四~九回の6イニングで被安打わずか3本。九回2死から抜いたカーブをうまく合わされ、二塁打を許したが、これ以外に得点圏に走者を進められることもなく、安定した投球を見せた。

 試合中の球速表示には、これまで未知の領域だった140キロを記録した。1回戦も1失点で完投勝利を収めたものの、終盤には疲れから、安打や強い打球を打たれてしまった。だが、この日は無四球で、最後の打者を見逃し三振にした。

 最後の決め球は外角低めの直球だった。「指に掛かった、この日最高の球だった」と振り返る。最後まで疲れを感じることもなく、尻上がりに調子を上げた。「今日の後半のような投球が、自分らしい投球だと思う。次の試合もこんな投球をしたい」と意気込みを語った。

 吉田洸二監督は「立ち上がりが悪くても、味方が三つアウトを取られる間に修正できる。この能力が、負けたら終わりのトーナメントでは一番重要だ」と林投手を高く評価し、エースに抜擢(ばってき)した。

 山梨学院は昨年の春、夏と連続で甲子園に出場しながらも、いずれも初戦敗退に終わった。林投手は両大会でベンチ入りメンバーに入っておらず、スタンドで敗戦を見つめていた。その後、急成長してエースの座をつかんだ林投手の進化は、今大会でも続いている。(三宅範和)

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

今すぐ登録(1カ月間無料)ログインする

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません