「大手と競争できるわけない」 新電力社長の嘆きと競争環境への疑念
地域ごとに大手が独占していた電力販売に、競争原理を導入した「電力システム改革」が岐路に立たされています。火力発電用の燃料価格の高騰で、経営体力のない「新電力」は撤退が相次いでいます。大手と競争できるわけがない、と話す新電力「SBパワー」の中野明彦社長に理由を聞きました。
――ロシアによるウクライナ侵攻で燃料価格が高騰しています。新電力にとっては、どのような事業環境ですか。
「お客様に『我々の方がお安いですよ』と申し上げられなくなり、新しい顧客の獲得ができなくなっています。どの新電力も同じかと思います」
大手電力が赤字で販売 健全ではない
――どうしてそのような状況になったのですか。
「大手電力が赤字で電気を販売しているためです。各社のメニューの中で、大手電力の『規制料金』が最安の状況になっています。新電力などと契約していた人が、2016年の自由化以前の規制料金に戻る例が増えています。競争上、健全な状態ではありません」
――大手はなぜ赤字で販売しているのですか。
「大手の規制料金は、値上げに国の認可が必要で、簡単に上げられないからです。電気料金には、燃料価格の変動を自動的に反映する制度があり、これ以上は上がらないという『上限』も設定しているため、料金が抑えられています」
「私たちのメニューにも同じ仕組みがありましたが、燃料価格の高騰で、あっという間に赤字が拡大し、上限を撤廃せざるをえなくなりました」
――大手10社中7社が4月以降の規制料金の値上げを国に申請しています。実際に値上げされると、状況は変わりますか。
「すぐには変わりません。規…