臆せず直球投げ込んだ 履正社の「背番号1」福田、レベルアップ誓う
(24日、第95回記念選抜高校野球大会2回戦 高知3―2大阪・履正社)
同点の四回裏2死。相手打者に1ボール、2ストライクの場面で、履正社のエース左腕の福田幸之介投手(3年)は、坂根葉矢斗捕手(3年)が出した外角直球のサインに首を振った。
要求したのは内角直球。福田投手は思い切り腕を振って三振を奪い、ベンチに戻りながら笑顔を見せた。
福田投手にとって、背中に付けたエースの証し「背番号1」は特別な数字だ。
層の厚い履正社の投手陣は、福田投手のほかにも、左腕の増田壮投手(3年)、右腕の今仲巧投手(3年)ら好投手がそろう。3人は入学直後から、エースの座を競い合ってきた。
ただ、福田投手以外の2人が1年生の夏の大阪大会からベンチ入りしたのに対し、福田投手がベンチ入りしたのは1年生の秋から。「何で俺だけ入れへんのやろ」と思い悩んだ。
昨夏の大阪大会では肩を痛め、ベンチには入ったがサポート役に徹した。
そんな時、母寿子さん(43)の言葉が支えになった。「心を折らずに今頑張れたら、けがが治った後にもっと頑張れる」
けがを乗り越え苦しい練習に耐えた。そして2月初旬の履正社のグラウンド。選抜大会に向けたメンバー発表で、多田晃監督から「背番号1」を渡すと告げられた。「やっともらえた。本当にうれしい」と、喜びをかみしめた。
甲子園の初戦では、序盤に緊張からボールが高めに浮いた。ただ、要所では臆することなく直球を投げ込み、七回まで相手打線を無安打に抑え込んだ。
しかし、好機を生かした高知に競り負けた。九回表、履正社の最後の打者が打ち取られたとき、福田投手は悔しさで涙した。
「スタミナと制球力を磨きたい。チーム全体で競争し、レベルアップしていきたい」。夏への決意を新たにし、球場を後にした。(岡純太郎)
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