A-stories 家族に知られたくなかった… 生活保護と「扶養照会」
生活保護を受ける人の親族に仕送りができるかどうかを聞く扶養照会。朝日新聞による全国74自治体への調査で、照会したうち仕送りが得られたのは0・7%だった。生活保護の申請を控える原因にもなっているとされる扶養照会は、このままでいいのか。生活保護制度に詳しく、福祉事務所でケースワーカーをした経験もある立命館大の桜井啓太准教授に聞いた。
――現状の生活保護制度の課題を教えてください。
生活保護が必要な人に届いているかを示す「捕捉率」が日本は2割程度と言われており、非常に低いです。これは命に関わる問題です。
低い補足率の理由の一つは資産要件の厳しさです。
保護が認められる開始時の手持ち資産は数万円程度までです。自動車の保有も原則として認められていません。
丸裸に近い状態にならないと、救わない立て付けになっています。自動車は、特に地方では生活必需品です。地域に応じて変えていく必要もあると思います。
もう一つの理由として大きいのが扶養照会だと考えています。
確認の対象となる親族が3親等と広すぎることや、誰に照会するかについての自治体の判断がまちまちなこともあり、親族に知られたくない人が申請をためらう障壁になっています。
――朝日新聞が全国74自治体にした調査では、照会した親族のうち、仕送りにつながったのは0・7%しかありませんでした。
1千件の扶養照会をして、支援につながらなかったものが993件あるというのは率直に言って大きいです。いかにこうした「不要」な扶養照会を減らせるかが課題です。
――扶養照会は必要なのでしょうか。
生活保護に限らず、制度とい…
- 【視点】
扶養照会がほとんど機能していない現実(仕送りが得られたのは1%未満)を確認したうえで、とはいえ扶養照会を一律にすべて廃止するのは難しいかもしれない(別居している親が子どもに対して養育費を払う義務などがあるため)、だが3等親という現在の極めて