「グレーゾーン」が多い前立腺がん検査 弘前大などが新たな手法開発
男性のがんで患者が最も多い前立腺がんについて、弘前大(青森県弘前市)を中心とする研究グループなどが、新たな血液検査の手法を開発した。患者ががんかどうかを区別できる精度が、これまでの検査よりも高く、負担の大きな精密検査に進む患者を減らすことが期待される。
前立腺がんと診断された人は2019年に9万4748人おり、国内の男性のがんで最も多い。初期は無症状だが、進行すると排尿困難などの症状が出る。進行は比較的ゆっくりで、早期に治療すれば生存率は高いが、進行して骨などに転移すると、5年生存率が5割程度まで低くなる。
検査には、前立腺で作られるたんぱく質の一種、PSA(前立腺特異抗原)の値を、採血して測る方法がある。前立腺の組織が、がん細胞などで傷つくと、血液中に出るPSAの量が増えるからだ。
PSAの値が、血液1ミリリットルあたり4ナノグラム以上の場合、がんの疑いがあり、前立腺の組織を調べる「針生検」という精密検査を行う。
針生検は細い針を使って前立腺を10カ所以上刺して組織を採る。局所麻酔はするものの、痛みや出血があるほか、感染症の恐れもあり、患者の負担となっている。
ただ、PSAの値は前立腺肥大症などほかの病気でも高くなる。値が4~10ナノグラムで「グレーゾーン」と呼ばれる患者では、7割程度ががんではないとのデータがあり、がんでない人の多くが負担の大きい針生検を受けていた。
研究グループは、PSAにくっついている糖鎖という物質に着目。がん患者の場合、その構造が変わることを突き止めた。
そこで、富士フイルム和光純薬(大阪市)とともに、糖鎖の構造の違いを判別する血液検査の検査薬を開発した。
前立腺がんの疑いのある患者439人を調べたところ、新たな検査法では、がんかどうかを区別する精度がPSA検査に比べ、2倍ほど高かったという。
検査薬は昨年8月、厚生労働省から製造販売の承認を受け、現在、公的医療保険の適用を申請中だ。
研究グループの弘前大泌尿器科の大山力教授は「PSA検査で数値の高かった患者の2次検査として使うことで、不要な針生検を受ける患者を減らすことができる」と期待している。(土肥修一)
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