「お母さんに本塁打を」 海星の池田陽翔選手
長崎市宮崎町にある海星三和グラウンド。ベンチのボードには選手たちの「序列」が掲示されている。1列目がレギュラーメンバー。その下に控えの2番手、3番手と続く。日々の練習を見ながら加藤慶二監督が入れ替え、下級生が上級生を追い抜くことも珍しくない。激しい競争がチームの活力を生んできた。
昨秋、沖縄であった九州大会では1年生3人がスタメン入りを果たした。1・2番コンビを組む田中朔太郎選手と永田晃庄(こうしょう)選手とともに、4番に抜擢(ばってき)されたのが池田陽翔(はると)選手だった。
「自分の売りは長打力。飛ばすことに自信がある」と話す。チームメートより体が大きかったこともあり、小中学校でもずっと主軸。チャンスでの一振りに爽快感を覚えてきた。
だが、選抜切符をかけた大事な舞台は全3試合で9打数2安打。「打ってやろう」という気持ちが空回りし、緊張で力んでしまう自分がいた。「思うようなバッティングができなくて。4番を意識しすぎたのかもしれません」と振り返る。
もっと体を大きくしたいと、冬場は「食トレ」にも挑戦。積極的に間食をとって体重を3キロ増やした。飛距離は以前よりも伸びたと手応えを実感している。
佐賀出身。中学時代に見学した海星の練習が気に入り、親元を離れて進学した。競争心をむき出しにして白球を追う選手たちの姿に「ここなら自分を高められる」と思ったからだ。
快く海星に送り出してくれた母の知依美(ちえみ)さん(38)は、ソフトボールの元選手。社会人でもプレーした。忙しい病院事務の合間を縫って野球を教え、練習に付き合い、少年チームの送り迎えをしてくれた。けがに苦しむ自分を励ましてくれた。だから今があると思う。
甲子園入りした後もチーム内の競争は続いている。社(兵庫)との初戦は代打で打席に立ったが、ライトフライに倒れてしまった。
26日の広陵(広島)戦。もしチャンスが巡ってきたら、やりたいことは決めている。
お母さんにホームランを届けたい――。(三沢敦)
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26日の広陵(広島)戦を前に海星の加藤慶二監督が代表取材に書面で応じ、「序盤に離されず、ついていくことが勝つための最低条件だ。大事なのは自分たちの野球をすること」などと抱負を語った。
昨秋の明治神宮大会で準優勝した広陵の印象について、「優勝候補で完全に格上。走攻守すべてでレベルが高く、すべての打者を警戒している」と加藤監督。ロースコアの展開に持ち込むのが理想とし、「中盤までに2―0か3―1ぐらいでリードできれば相手の焦りを引き出せるだろう」と予想した。
社(兵庫)戦で先発したエース吉田は制球に苦しみながらも被安打4、失点1と粘投した。「甲子園にも慣れてきたのでそれ以上の投球を」と期待を寄せ、「戦力差は明らかだが、プレッシャーの中で守り抜くことをテーマに頑張りたい」と意気込みを語った。(三沢敦)
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