「学びを止めないで」 フリースクールは出席? 割れる校長の判断
学校に足が向かない児童生徒が増えるなか、フリースクールに通ったり、自宅でオンライン学習をしたりと、学びの形が多様化している。それらを学校が「出席日数」とみなすかは、各学校長の判断だ。一方で、ばらつきをなくそうという取り組みも岐阜県内で始まっている。
フリースクール「Mahalo」は、岐阜市中心部の柳ケ瀬から西へ約1・5キロの住宅街にある。
2月半ば。多くの子どもにとってゆううつな、雨降りの月曜日だ。昼下がりに数人がテーブルに並んでワークブックを広げ、講師と向き合って筆を走らせていた。足元にそっと塾長の愛犬が寄り添っていた。
ここに通う中学2年の男子生徒は「マンツーマンで教えてもらえて、勉強も安心してできる」と話す。1年の夏ごろ、学校の教室には通えなくなった。
はじめは「とにかく自分の心を休めたい」と、学校と距離を取った。一方で両親からは「無理はしなくてもいいけれど、高校は出た方がいい」と言われ、出席日数のことも気になる。「出席日数は、高校に入るときに大きな壁になるかもしれない」。将来を考えるとそんな不安もある。
幸い、フリースクールでの勉強について、在籍校の校長は出席扱いにしてくれた。2年生になると学校の教室以外の部屋にも行けるようになって「成長できているんだな」と感じた。前期の通知表は「出席日数が欠席日数より多い。うれしかった」と自信にもなった。
このスクールの「毎日通うコース」の場合、週4日の午前11時~午後3時で、料金は小・中学生2万7500円(税込み、昼食付き)。
この生徒のように、年間で30日以上登校しない児童生徒が増えている。文部科学省の調査では、2021年度は全国で24万4940人と過去最多。このうち4割弱が、公立の教育支援センター(適応指導教室)や民間のフリースクールなど学校外の施設とつながっていたという。
文科省はこうした日数も、成績証明などの原簿として残す「指導要録」では出席扱いにできると通知している。コロナ禍で普及した自宅でICT(情報通信技術)を使った学習も出席扱いにできるとしている。
「出席」に難色示す学校も
しかし、県内ではオンラインの学習支援が出席と認められない事例もある。
岐阜市のNPO法人「教育・地域交流機構」では、不登校の子ども向けにオンラインでの「ホームスクーリング」をしている。
子どもの学習の進み具合や体調を保護者から聞き取り、教科書の内容に沿って学習計画を立てる。子どもは自宅で学校のワークブックなどを使って勉強する。週1回、小中学校の元教諭や心理カウンセラーらがオンラインで面談し、学習の進み具合を確かめて分からない問題を一緒に解いたり、心の悩みを聞いたりする。料金は月1万1千円。
現在は中学3年の2人が利用するが、いずれも在籍校の「出席扱い」にはなっていない。「周りの学校でやっていない。うちだけではできません」と難色を示す学校もあるという。
木野村真由美理事長(57)は「学校教育は大切だが、どうしても行くのがつらい時期は選択肢を増やしてあげたい。苦しい時だけその子に合わせた支援をすれば、子どもはきっと前向きになれる」と話す。出席扱いになろうがなるまいが学びを止めないで――。木野村さんは、子どもたちにこう伝えている。
学校とフリースクールの連携協議会も
岐阜県内では、小中学校の校長とフリースクールの関係者らによる連携協議会が2021年にできた。
県教育委員会がフリースクールなどに聞いたところ、同年5月時点で、12の施設・団体に約200人の小中学生が在籍していた。その半数の施設・団体が「在籍する学校によって出席扱いになる場合とそうでない場合がある」と答えた。
岐阜市のMahaloは毎月、保護者らを通じて13人の利用日数を学校側へ伝えている。全員が「出席扱い」になっているという。利用日数だけ伝えればいい学校がある一方、スクールで過ごす利用者の写真や、文書で報告を求める学校もある。渡辺健塾長(54)は「学校ごとに提出する書類が異なるので手間がかかる。限られた人数で運営しており、子どもとふれあう時間を一番大切にしたいのだが……」と頭を悩ます。
県教委は、文科省の通知を踏まえて出欠の取り扱いについてガイドラインで示している。教育支援センター(適応指導教室)や不登校特例校、フリースクールの一覧をHP(https://www.pref.gifu.lg.jp/uploaded/attachment/324584.pdf)で紹介する。「岐阜県教委 不登校」で検索できる。(高木文子)
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