同世代の好敵手が待つA級へ あの日、中村太地八段がつぶやいた言葉

有料記事

村瀬信也
[PR]

 将棋の中村太地八段(34)が、名人挑戦権を争うA級順位戦への昇級を決めた。強豪がひしめくB級1組で、初参加ながら9勝3敗の好成績を挙げた。初めてのA級では、一時は雲の上の存在だった好敵手と相まみえることになる。まだ上を見上げていた頃に記者が聞いた、忘れられない言葉がある。

 中村は2000年、小学6年の時に棋士養成機関「奨励会」に入った。順調に昇級、昇段を重ね、17歳で四段昇段を果たす。「高校生棋士」は先輩のトップ棋士たちに劣らない勲章と言えたが、五つのクラスがある順位戦では苦戦を強いられた。昇級までに、最も下のC級2組で6期、次のC級1組で4期を要した。

 B級2組に上がった16年。中村は、4月に長野県松本市で行われた第74期名人戦七番勝負第2局の副立会人を務めた。当時の名人、羽生善治九段(52)に挑戦したのは、まだ八段だった佐藤天彦九段(35)。A級1年目で8勝1敗の成績を挙げ、いきなり名人戦の舞台を踏んでいた。

 先手の佐藤が矢倉を採用し、熱戦に。終盤、積極的に攻めた佐藤が勝利をつかもうとしていたその時、控室で将棋盤を囲んで検討していた中村はこうつぶやいた。

 「自分より後にプロになった…

この記事は有料記事です。残り1627文字有料会員になると続きをお読みいただけます。
今すぐ登録(1カ月間無料)ログインする

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません