「なんで自分はベンチなんや」 東邦の山北、秋の悔しさ晴らす好投
(25日、第95回記念選抜高校野球大会 愛知・東邦6―3香川・高松商)
春の甲子園最多タイの通算58勝を呼び込んだのは、公式戦の経験がほとんどない右腕だった。この日の先発を託されたのは山北一颯(かずさ)投手(3年)。振りが鋭い高松商に7安打を許し、三振は一つ。緩いボールを有効に使い、6回1失点で逆転につなげ、継投策を成功させた。
秋の愛知県大会(地区予選は除く)と東海地区大会の全8試合でエース宮国凌空(りく)投手(3年)が先発した。山北投手は1回19球を投げただけだった。
今大会では初戦の鳥取城北戦に2番手として登場し、1回を無失点で切り抜けた。山田祐輔監督は「いい表情で投げていて、マウンド度胸がついているようだったのでチャレンジした」と今回の先発起用について話した。
189センチの長身から、130キロ台の直球とスライダーで緩急をつけ、低めに投げ込んだ。「なんで自分はベンチにいるんや」という秋の悔しさも添えて。
二回、味方のスクイズ失敗があったなか、先制点を許した。しかしここで崩れない。三回2死一塁、一塁走者を冷静に牽制(けんせい)を使って挟殺に。「走るそぶりを見せていた。仕掛けてくるなと思ったので狙ってやろう」
逆転した直後の四回も無死一、二塁のピンチ。136キロの直球で後続を併殺に仕留めた。「打たれてもいい」。開き直って思い切り投げた。
五回には打者として一塁ベースに当たる適時打を放つおまけも。「ラッキーだった。自分で自分を助けることができた」と言う。
父の茂利さんは191センチから投げ下ろし、中日などで208試合に登板した元プロ左腕。山北投手の右投げは母譲りだ。父からは「とにかくがんばれ」とエールをもらい、マウンドに立った。「チームが勝てばいい、自分はいつでもいける」と次の登板への意欲も語った。(土井良典)
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