高松商エース「準備はコントロールできる」 負けても残る努力の過程
(25日、第95回記念選抜高校野球大会2回戦 東邦6―3高松商)
0―0の二回表。東邦の先頭、4番打者に左中間を破る二塁打を打たれたが、エース大室亮満投手(3年)は冷静だった。
犠打で1死三塁とされると佐藤颯人捕手(3年)が駆け寄った。「1点ならオーケー。焦らずに」。大室投手は軽くうなずき、野手陣を振り返ると、落ち着いて人さし指を立て、1死を確認する合図を送った。
続く4球目、相手打者がスクイズの構えを見せた。立ち上がった佐藤捕手を見て、瞬時の判断で高めに外し、飛び出した三塁走者をアウトにした。
最後は188センチの長身から136キロの直球を投げ下ろして空振り三振を奪い、無失点で切り抜けた。
雪辱のマウンドだった。昨夏の甲子園では、2年生ながら4強をかけた滋賀・近江戦で先発を任された。だが球場独特の雰囲気にのまれて5回4失点。力を発揮できず準備不足も痛感した。
「結果はコントロールできないけれど、準備はコントロールできる」。秋以降は投球フォームや体調の調整法など、グラウンドから私生活に至るまでの全てを見直し、常に甲子園の舞台を想定して過ごしてきた。
母早苗さん(55)も変化を実感してきた。新チーム発足以降は、朝練習に向けて家を出る時間や就寝時間も早くなっていたという。「決めたことはコツコツとできる子」と目を細める。
この日は131球の完投で6失点。試合後、「今のままでは上のレベルには通用しない」と唇をかんだが「準備はうまくいき100%に近い力を出せた」と振り返った。
「夏はチームの勝利に貢献できる投球をします」。最後の大会を見据えて、さらなる成長を誓った。(堅島敢太郎)
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