作新学院「打たれたら打ち返せばいい」 逆転HR導いた冬の打撃強化
(25日、第95回記念選抜高校野球大会3回戦 栃木・作新学院9―8香川・英明)
激闘に決着をつける大飛球が舞い上がる。
1点を追う九回1死一塁。5番武藤匠海が内角に入ってきた123キロを思い切りよくたたいた。勢いよく上がった球を見上げて走り出すと、右腕を上げた。「とらえた瞬間に、これはいったなって」。打球は左翼スタンドへ。逆転の2ランを放り込んだ。
3度先行されながらも、競り合う展開。そこで追いつき、追い越せたのは、選抜に向けて高めてきた打撃の力があったからだ。
一回に先取点を許し、六回まで3点をリードされた。が、七、八回に8本の単打を集めて計6点を奪って盛り返した。2打点の東海林智は明かす。「5点取られたら、6点取ればいいという風にやってきた。打たれたら打ち返せばいいとベンチでもいっていた」
選手たちはつなぐ意識も共有していた。小針崇宏監督は「2巡目以降、つなごうと徹底して安打が出るようになった。それが最後の粘りにつながった」。
昨秋の公式戦のチーム打率は3割5分8厘。これをさらに引き上げるため、この冬は徹底的に打撃練習にこだわった。毎日約4時間、ティーバッティングなどに費やした。
選手がこだわったのは軸足の動きだ。しっかりと体重を乗せることを意識し、球を呼び込んで力強く打ち返す。バットの構え方などの基本も見直した。重さ1キロの長いトレーニングバットを振りこんで下半身を強化した選手もいる。
追い込まれても迷いなく振り抜く。それが終盤での粘りを生み、計25安打を記録した乱打戦を制する勝因につながった。
23年ぶりの春8強。武藤は「一歩ずつ進んでいきたい」。劇的な勝利にもかかわらず、浮かれることなく目の前の1勝を見据えている。(堤之剛)
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