「グローバルサウス」ってなに? 「新興国」や「途上国」との違いは

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聞き手・加藤あず佐
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 5月に広島で開かれる主要7カ国首脳会議G7サミット)に向けて、岸田文雄首相が「グローバルサウスとの関係強化」を打ち出すなど、外交の場では最近、「グローバルサウス」という概念がよく用いられています。そもそも、どのような意味合いがあるのか。「新興国」や「途上国」とは違うのか。松下冽・立命館大学名誉教授(国際関係学)に聞きました。

 ――「グローバルサウス」という概念は、なぜ生まれたのでしょうか。

 グローバリゼーションが進み、国際秩序が変容する中で、「新興国」「途上国」「北と南」といった従来の枠組みでは現状を反映できなくなったためです。「グローバルサウス」は国際関係学において、単なる地理的・静態的な概念ではありません。グローバル化のマイナスの影響を受ける国々や地域、諸問題、さらにそれらの関係性を含む社会的カテゴリーです。

グローバル化で新たな概念が必要に

 ――背景にはグローバル化があるということですね。

 冷戦後の1990年代から、人・モノ・カネ・情報・サービスが国境を越えて普及するグローバル化が進みましたが、これを契機に誕生した概念です。市場と競争を最優先し、規制緩和を進める新自由主義によって格差が拡大。移民・難民や食糧危機、環境問題、暴力、感染症など、越境型の問題が増えました。多国籍企業あるいはグローバル企業といった、国境を越えて経済活動をする主体も存在感を増す中で、相対的に国家の力が弱まり、その役割が変容してきました。

 このような国境を越える諸問題や、多様なアクターが生まれる中で、地理的な区分である「南」や、国民国家を前提として欧米中心の経済主義的な基準にとらわれた「途上国」という概念では、現状をとらえきれなくなってきているということです。

 ――単なる地理的な区分ではないとのことですが、「途上国」や「新興国」と言われていた国々と地域的には重なるのでしょうか。

 多くは重なりますが、新自由…

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    平尾剛
    (スポーツ教育学者・元ラグビー日本代表)
    2023年3月28日10時32分 投稿
    【視点】

    世界情勢を見据えるとき、また今日私たちが生きる社会を知る上で欠かせない概念が「グローバルサウス」です。この「メガネ」を通して目を凝らせば、貧困や格差の原因また資本主義の本質を考えるための土台がもたらされると私は考えています。 記事のな