長く首都のランドマークとして都市景観を形成してきた二つのビルが姿を消しつつある。東京・丸の内の東京海上日動ビルと銀座の三愛ドリームセンターだ。姿を変え続ける都市にあって、その景観はどう考えればよいのか。
着工前に美観論争を呼び起こし、日本の都市景観史に名を刻むのが、東京駅のほど近く、皇居前に立つ東京海上日動ビル(1974年完成)だ。
東京文化会館などを手掛けたモダニズム建築の巨匠、前川國男の設計による高さ127メートルの超高層ビル計画が発表されたのは、66年のこと。当時、周囲のビルは古い規制に基づく高さ約30メートルにそろっていたこともあり、景観を乱す、皇居を見下ろすのは不敬だ、などと「美観論争」を巻き起こした。結局、高さを100メートルにすることで決着。れんが色のタイルを外装にまとった落ち着いた姿を見せている。
完成当時は1本だけノッポビルが立っている状態だったが、現在では東京駅周辺には150~200メートル級のビルが林立し、東京海上日動ビルは絵本の「ちいさいおうち」のようになっている。
西村幸夫・国学院大教授(都…