素敵な試合 斎藤佑樹さん、前倒しタイブレーク「いいことだと思う」
斎藤佑樹「未来へのメッセージ」 仙台育英と慶応の一戦に
第95回記念選抜高校野球大会は3回戦に入りました。初戦で注目していたのが、21日にあった仙台育英(宮城)―慶応(神奈川)の2回戦です。
緊迫した好ゲームとなり、延長十回タイブレークの末、仙台育英が2―1でサヨナラ勝ちしました。昨夏の全国制覇の原動力となった投手層の厚さは健在でした。
二回1死満塁で早くも継投に出て、2番手の高橋煌稀投手が2者連続奪三振で切り抜けます。九回無死一塁から3番手の湯田統真投手が救援しました。一度は同点に追いつかれたものの、無死一、二塁から始まるタイブレークの十回を無失点で耐え、サヨナラ勝ちにつなげました。
2人とも制球を間違えてはいけない場面で間違えない。昨夏の全国選手権で高橋投手は4試合、湯田投手は3試合に登板しました。大舞台での経験値の高さを改めて感じました。
夏の甲子園の優勝投手で元プロ野球選手の斎藤佑樹さん(34)が、高校野球情報サイト「バーチャル高校野球」のフィールドディレクターとして取材活動をしています。野球界やスポーツ界の未来を考えます。
仙台育英も慶応も新チームになってから取材に訪れた学校です。この2校には、勝利だけにとらわれないという共通点があるように思います。仙台育英は「選手個々を伸ばすこと」を大事にし、慶応は「エンジョイ・ベースボール」をテーマに掲げます。
0―0の三回の慶応の攻撃中に印象的なシーンがありました。
2死二塁で5番の清原勝児選手が打席に入ると、仙台育英の高橋投手が笑顔を見せました。2ボール2ストライクとなり、清原選手も笑みを浮かべました。
結果は二ゴロ。特に試合が動いたわけではありませんが、重圧を感じてもおかしくない状況で2人が「野球を楽しんでいる」ことが伝わってくる、素敵な場面でした。
この試合では「延長十回からのタイブレーク」が初めて適用されました。より早期の決着を図るため、十三回だった開始イニングを今春から十回に早めたのです。
僕自身、高3の春と夏の甲子園で延長15回完投を2度、経験しました。プレーする側から見る側になり、試合が長いと思われているかもしれないと感じることもあります。こうやって早く決着がつきやすくなるのは、選手の負担を考えてもいいことだと感じました。
高3の春の選抜は関西(岡山)との2回戦が延長15回引き分け再試合となり、準々決勝では横浜(神奈川)に3―13で大敗しました。
全国における現在地と頂点までの距離をじかに感じることができ、夏までの3カ月間は、目の色を変えて練習をしました。
「球を速くしたい」「コントロールをよくしたい」と漠然と取り組むのではなく、「延長戦を投げ抜くためには」「横浜の打線を抑えるためには」と、課題を明確にできました。あの春を生かせたから、夏に全国制覇ができたのだと思っています。
慶応を含め初戦で敗れたチームも、この春の頂点に立つチームも、発展途上です。今大会の経験を、どう生かし、成長していくのか。集大成の夏への大きなポイントになります。(斎藤佑樹)
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