病気の高校生、収録授業で単位認定OK 「学校とのつながりは支え」
長く治療が必要な高校生が、病院や自宅で「オンデマンド型」(録画など)の授業を見て学んだ場合、単位の認定ができるようになる。文部科学省は、リアルタイムでつなぐ同時双方向型の授業のみ認めてきたが、4月から制度を変更する。当事者や教育関係者からは喜ぶ声が上がるが、同時双方向型の普及と充実を要望する声も多い。(上野創)
病室でのオンライン授業を受け、卒業できた高校生が気持ちを語ります。制度も変わりつつありますが、録画などの授業には課題もあるといいます
愛知県の澁谷仁美さん(18)は県立高1年生だった2020年秋から2年生の終わりまで、赤血球や白血球、血小板が減少する難病の再生不良性貧血の治療で登校できなかった。コロナ禍の一斉休校の後、やっと学校になじんでこれから、というときだった。
診断直後、学校と病院側に伝えた。「留年なら(学校を)やめたい、なんとしても進級したい。受験してせっかく入った学校なのに病気でやめたくない」。女性教諭が調整役となり、他の教員や教育委員会、医療者の協力で、同時双方向型のオンライン授業を受けて単位取得を目指すことにした。
ただ、吐き気やだるさがひどい時は、病室で授業を受けるのがつらかった。横になって聞いたものの、集中できないことがあったと打ち明ける。検査や治療のため出られない授業もあった。通信回線が切れたり聞きづらかったりしたことも。「そういう時に録画で見られたらありがたかった。特に骨髄移植後は体力もなくて大変だった。後から見直すことができれば授業ももっと理解できたと思う」と話す。
体調や治療で制約 「録画あればありがたかった」
校内では当初、「同時双方向で受けていることを厳密に確認する」との考えから、病室側のカメラをオンにし、教師からの問いかけに応答させるべきだ、との意見があった。結局、治療中の心身の負担を考え、澁谷さんが「挙手」ボタンで画面上にサインを出すのを教師が確認することで、落ち着いた。
つらい副作用で心や体が何度も厳しい状況になったが、無菌室や検査室の待合でも端末を手に授業を視聴した。「その時間につなげば単位が取れるから頑張った。それに学校に戻る時に勉強が遅れていたら困るから」と澁谷さんは話す。
定期テストも、病室に厳封された試験問題を持ち込み、解答中の様子を学校の先生がカメラで監督するなどして受けた。
3年生で登校を再開できたが、感染対策や体力の低下から校内の別室で同時双方向の授業を受け、秋から少しずつ教室に復帰、無事に卒業した。3月の卒業式には同級生と一緒に出られた。4月からデザインの専門学校で学ぶ。「出席を支えてくれた人たちのおかげです。病気の生徒のために遠隔教育はもっと広まってほしいし、時にはオンデマンドも認めてほしい」と話す。
高校は、義務教育と違い院内…