新聞で大胆に性の本音を 酒井順子さんが驚いた「オトナの保健室」
女性用風俗、生理、中絶、性感染症……。朝日新聞で2015年に掲載の始まった「オトナの保健室」は、女性の目線から性を語る切り口で、もうすぐ掲載100回目を迎えます。「新聞でこれほど大胆に性のことを書いてしまって大丈夫なの?」と驚いたというエッセイストの酒井順子さん。「女性は性について口をつぐんでいるものと思われていた中で、目が開かれる思いがした人は多いはず」と語ります。
――酒井さんは掲載直後から「オトナの保健室」に注目してくださったそうですね。
新聞でこれほど大胆に性のことを書いてしまって大丈夫なの、と。老若男女が手に取る新聞で、女性の性に関する多様な考えや悩みを示した点で画期的でした。
従来、性に関するメディアの発信は、男性誌・女性誌など片方の性別を対象とした媒体で完結してきました。
女性は性については意見を言わないものだ、意見自体がないのではと都合良く解釈されてきた中で、実はそうではない、生々しい本音があるんだと。女性の主体的な語りは、男性たちには驚きだったはず。
言語化されない限り、問題は可視化されません。昨今、性や体のことを自分の言葉で語った方がよいとの流れになっていますが、一つのきっかけになったのではないでしょうか。それにしても、よく新聞でこの企画を始められましたね。
――日頃、記者たちは「中学生でも読めるように書きなさい」と指導されます。「セックス」という言葉ひとつ載せるのもハードルがありました。初回はセックスレスを特集したところ、多くの反響が寄せられ、次第にテーマを広げていった次第です。
15年4月に掲載の始まった「オトナの保健室」。メディアで話題にされることの少なかった性について、女性目線の発信にこだわり、性交痛や中絶の経験など、埋もれた問題を可視化してきました。過去の記事をまとめた書籍も出版されています(集英社刊、1430円)。
朝日新聞は戦後に女性の投稿欄「ひととき」を創設し、1950年代には「投書夫人」というワードが流行語になるなど、大きな話題になりました。
女性に文章なんて書けるわけがないといった声もある中で、市井の女性たちが、自分の言葉で生の意見を出すこと自体がすごく珍しかったわけです。「オトナの保健室」は同じようなインパクトを与えたのだと思います。
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