「野球がうまいだけの人間にはなってほしくない」。花巻東高校(岩手)の佐々木洋監督(47)は力説します。その理由はなぜか。野球部が果たせる人材育成について、語ります。
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花巻東の野球部に課せられたミッションは、「野球選手を育てる」ではありません。「野球ができる立派な人間を育てる」です。
野球で培った身体能力なんて、長い目で見たら人生の役には立ちません。大谷翔平(エンゼルス)だって、80歳になっても160キロを投げられるわけではない。だいいち、野球で一生ごはんが食べられるのは、ほんの一握り。野球がうまくなることだけに高校生活を費やすのは、時間の無駄遣いです。
野球部では2年生になると、面談を重ねて進路を決めていきます。例えば、難関とされる大学に硬式野球部では推薦入学できる枠がなく、準硬式野球部や他の競技スポーツ部の枠ならあるとします。生徒には迷わず後者を勧めます。学歴がすべてではありませんが、人脈や就職先が、間違いなく変わります。
2022年度の3年生は38人でした。大学で硬式野球を継続するのは8人です。15人が準硬式野球。昨年の選抜大会に6番・右翼手で先発出場した八木駿太朗は、関西学院大でアメリカンフットボールを始めます。身長187センチ、体重92キロ。身体能力も高いので適性があると思い、勧めました。
大巻将人、という生徒がいま…
- 【視点】
あえて身体能力の限界を語ることで、スポーツの本質・学ぶべきものを炙り出せるのかもしれない。
- 【視点】
海外の大学でスポーツをする場合、NCAAの規定により学業も単位は成績によっては試合にでれなくなってしまう。そのために、練習はもちろん勉強も頑張らなければならない。しかも、日本の大学のような甘い授業ではなく、他の学生と同様に宿題もしっかりとこ