心肺停止の患者への蘇生、中止求める例が増加 神戸市が新たな運用
心肺が止まり、救急搬送される患者。息を吹き返させようと蘇生処置が行われる中、「処置をやめてください」と家族から求められることが増えている。これを受け神戸市消防局は4月から、新たな運用を始める。同じ動きは全国に広がるが、医師からは困惑する声も出る。(鈴木春香)
高齢化が進む中、末期がんや老衰などの終末期を、自宅や高齢者施設で過ごす人は増えている。この中には、心肺が止まった時に短期的な延命のための蘇生処置を望まない人もいる。穏やかな最期を迎えたいという考え方だ。
ただ、その意思が家族と十分に共有されているとは限らない。共有されていても、いざ心肺が止まると動転して119番通報してしまうことも多い。駆けつけた救急隊はすぐに蘇生処置を始めるが、家族が本人の残していた意思を改めて確認し、処置をやめるよう求めるケースが相次いでいる。
意思に反して搬送、大半で
市消防局によると、救急隊が現場で処置を希望しないと言われた事例は、昨年90件(速報値)。年々少しずつ増えている。ただ、救急隊は蘇生処置をすることが活動のルールとなっており、大半は本人の意思に反して病院に搬送されていた。
新たな活動手順では、蘇生を望まない本人の意思を救急隊が確認した場合、かかりつけ医の指示のもとに蘇生処置を中止できると定めた。かかりつけ医にはカルテの記録などをもとに本人の意思を確認し、救急隊に伝えてもらう。処置を中止した後は、患者を病院には運ばず、かかりつけ医に引き継ぐなどする。
この運用は、2年前から有識者を交えた検討委員会で議論し、今月発表された。各地の消防本部でも同様の検討が進む。総務省消防庁によると、2021年の調査では、心肺蘇生を望まない傷病者について「心肺蘇生を中止または中断できる」と定めた消防本部は全国に204(28%)あり、2年間で86増えた。
蘇生中止の具体的な基準につ…
- 【視点】
もう4年近く前に出したものですが、複数の記者が取材をした以下の記事の監修をしました。 ■やせた胸を押すふりして運んだ 蘇生拒否、救急隊の葛藤 https://digital.asahi.com/articles/ASM6G7DG0M6G