残業の上限規制まで1年 建設業の切り札「建設ディレクター」とは

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大西英正
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 なじみの薄い「建設ディレクター」という民間資格が、にわかに注目を集めている。働き方改革関連法による時間外労働の上限規制が来年4月から建設業にも適用され、労働環境の抜本的な見直しを迫られることが、その背景にある。効率よく仕事を進め、働き過ぎをなくす切り札になるのか。

現場監督のデスクワーク請け負う

 建設業で長時間労働になりがちなのは、元請けの現場監督。朝から現場で下請けの技能者たちを指揮し、夕方以降は事務所に戻り、作業の進捗(しんちょく)を記録したり、翌日以降の計画を練ったりする。このデスクワークの一部を受け持つのが建設ディレクターだ。

 埼玉県東松山市の中堅建設会社「伊田テクノス」には5人の建設ディレクターがいる。昨年11月に資格を取った坂麻弥(ばんまや)さん(47)はもともと、派遣社員として2021年春に入社。建設ディレクターの資格をとって今年1月から正社員になり、本社で事務作業を担っている。

 「これまでの資料作成より複雑で専門的な内容を扱い、責任感が増した。やりがいがある」

 坂さんら5人の建設ディレクターは、施工計画書に記載しなければならない施工方法や安全管理、環境対策といった項目を分担して入力している。従来は現場監督が1人でほぼ一手に担ってきた仕事だ。工事の工程など現場の状況を踏まえてしか書けないことだけを残し、大半の項目を記入して現場監督にわたす。

 同社で30年以上、現場監督を務めるベテラン社員は「事務作業が減り、現場の仕事に集中できるのでありがたい」と言う。

反発も残業時間が半減

 この仕組みの実効性を高めるには、現場監督と建設ディレクターの連携が欠かせない。同社はまず18年に現場監督を補助する「業務支援グループ」をつくった。現場監督の多岐にわたる業務のなかで外注できるものを洗い出し、徐々に移管。そのうえで21年に建設ディレクターを導入し、職位として定め、手当も支給している。

 「責任感が強い昔気質のベテ…

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